マーケティング再入門
「これからの商品・サービスの開発・その14」
コトラーは、マーケティング3.0において、企業のミッションを消費者へマーケティングするための三原則として、「普通ではないビジネス」「人びとを感動させるストーリー」「顧客エンパワーメント」をあげています。
「普通ではないビジネス(Business as Unusual)」については、前回取り上げましたので、今回は2番目の「人々を感動させるストーリー」について「コトラーのマーケティング3.0」から復習してみたいと思います。
コトラーは「横につながっている世界では、ブランドを取り巻くストーリーは絶え間なく書き換えられ、市場に流布する最終的なストーリーがどうなるのかは、もはや企業には分からない」、だからこそ「最初に本物のストーリーを語ることが常に最善の策」だと言います。
コトラーが、ブランド・ストーリーの構成要素としてあげるのは「キャラクター」「プロット」「メタファー」の3つです。
まずは、キャラクターについて。前回復習したように、ブランドは「普通ではないビジネス」を約束し、文化的な満足を届ける必要があります。
ブランドが普通ではない社会の問題に取り組み、人びとの生活を変える運動の象徴になるとき、そのブランドは偉大なキャラクターとして認知されるようになります。さらに、ブランドが文化運動と同一視されるようになると、そのブランドは文化ブランドになる、ということです。
プロットについては、実は優れたストーリー・プロットはそれほど多いわけでなく、「チャレンジ型」「コネクション型」「クリエイティブ型」のどれかに当てはまるものが多いようです。若きスティーブ・ジョブスが放った伝説的CM「1984年」は「チャンレジ型」の典型といえるものでしょう。
メタファーについては、「消費者が持つメタファーと相性のよいメタファーを持つストーリーは、消費者にとって意味を持ち、真実であると認知される」ということです。
「コトラーのマーケティング3.0」の中では、意識の奥底にあるメタファーを掘り起こす1つの方法として「ザルトマン・メタファー表出法(ZMET)」を紹介していますが、これについての詳しい解説は、ここでは省略します。
コトラーによると「ビジョンを描けるリーダーは、その大多数がストーリーを創作しているわけではなく、日常世界に漂っている利用できるストーリーを見つけるだけ」だと言います。
これについてひと言補足すると、単に人びとが感動しそうな表層的な筋立てのストーリーを思いつくのが得意というだけでは「普通ではないビジネス」とは言えません。人びとの意識の奥底にある欲求や不満、不安を解消したり、満足させるような“メタファー”を宿したストーリーを発見できる、そのようなケイパビリティを持ったリーダーということになると思います。
(by インディーロム 渡邉修也)