マーケティング再入門
「ダイレクト・マーケティング・その1」
マス・コミュニケーション優位の時代には「どうすれば顧客に到達できるか」という命題のもとにマーケティング戦略が考えられてきましたが、インターネットを通じてダイレクトに顧客とつながることが技術的に容易になった現在では、「どうすれば顧客に見つけてもらえるのか」、さらには「どうすれば共感してもらえるのか」ということが重要命題になってきています。
まず、ダイレクト・マーケティングの定義から復習してみたいと思います。
「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント」では、「ダイレクト・マーケティングとは、仲介業者を使わずに消費者直接販売(CD)チャネルを利用して、顧客に到達し、財やサービスを届けること」としています。
“顧客に到達”という表現になっていますが、これは、上記の本の中では、テレ・マーケティング、カタログ通販、テレビ・ショッピングまで多様なダイレクト・マーケティングの形態を網羅的に解説しているため、“顧客に到達”という表現をとっているのは至極当然なことです。
ですが、ここでは敢えて「お客様に見つけてもらい、共感してもらうことで、商品・サービスを購入し、さらにはリピートしてもらえるような関係の構築」ということをインターネットを通じたダイレクト・マーケティングの目標に据えてみたいと思います。
こうした考え方は、スモール・ビジネス、ニッチ市場においては当然のこととして、マス広告など行っているようなナショナル・ブランドでも、「見つけてもらう」過程は省略可能としても、「共感」過程以降は同様に重要課題になると思います。
大量に情報を拡散し、じゅうたん爆撃されすれば、つまり数打ちゃ当たるというマーケティングの対極にある考え方です。
ワン・トゥ・ワン的な関係の構築、それがリアルなワン・トゥ・ワンでないとしても、顧客からの相談ごとに寄り添うような対応が出来るかどうか?
同じテレ・マーケティングにしても、見込み客や顧客に電話営業をしかけるアウトバウンド・テレマーケティングに力点を置くのではなく、購入前の相談窓口、購入後のサポートに力点をおくインバウンド・テレマーケティングの方が共感を得やすく、リピート率もアップすると考えられます。
顧客の生涯価値(CLV = Customer Lifetime Value)ということを考えれば、常に新しい獲物を追い続けるマーケティングよりも、優良顧客との良好な関係を維持する方が、総体として得るものが大きいという考え方です。
共感、CLVという考え方は、スモール・ビジネスにおいては、さらに重要になってきます。
例えば、有機無農薬の農産物は当然割高なものになりますが、生産者がインターネットを通じて、自らの考えをメッセージとしてしっかり打ち出し、共感を得ることができれば、直接消費者とつながり、直接販売していくこと、つまり「ゼロ段階チャネル」も、それほど難しい話ではなくなっているわけです。
(by インディーロム 渡邉修也)