マーケティング再入門
「パブリック・リレーションズ・その5」
前回は最後の方で、パブリック・リレーションズにおいてもポジショニングの発想が重要ということに触れましたが、今回はその続きです。
アル・ライズとジャック・トラウトは、「ポジショニングの基本は、消費者の頭の中にあるイメージを操作し、それを商品に結びつけること」としています。
また、「一般に頭脳は、過去に得た知識や経験に合致するものしか受けつけない」とし、「脳が既に正しいと思い込んでいる事柄を、否定し心変わりをさせる試みはほとんど失敗に終わる」とも書いています。
つまり、消費者の頭の中にあるイメージを操作するといっても、強引で押し付けがましいやり口ではうまくいかないわけです。
これは、パブリック・リレーションズの活動を行う際にも、常に念頭に置いておくべきことかと思われます。
頭の中に既にあるイメージの苗床に対して、イメージの種を芽吹かせ、開花させるための、触媒となるようなメッセージ。押し付けがましくなく、すーっと心の苗床に浸み渡っていくようなメッセージが理想なのでしょう。
また、メッセージを「単純化」することも大切だと言っています。
人は、一度に沢山の情報を受け取ることができません。仮に、7つの伝えたい項目があるとすると、落ち着いて話しを聴く環境にあるプレゼンテーションのような場であれば、3項目くらいまでなら、なんとか伝わるかもしれませんが、PRや広告の場合は3つでも多過ぎます。メッセージが薄まってしまい、こちらの熱意のわりに、記憶に残ってくれないのです。
肝心なのは、コミュニケーションの技法をあれこれ改善することではなく、「取捨選択」することだと、アル・ライズとジャック・トラウトは指摘しています。
次々に登場する新しいSNSと、それらを活用した新手のマーケティング手法に翻弄され、次第に何をやっているのか訳が分からなくなってしまうこともあります。あれこれ手を出すより「取捨選択」と「集中」。そして何より、何を伝えるのか。技法よりも内容そのものが重要なのは言うまでもありません。
アル・ライズとジャック・トラウトは、「消費者は常に正しい」とも言っています。
どんなに正論を並べても、相手に理解されなければ、単なる説教に終わってしまい、むしろ反発を招きます。
パブリック・リレーションズにおいても、対象とする相手(消費者なのか、投資家なのか、地域社会なのか)、つまり受け手となる人々がメッセージを「どう」受け取るのか?こちら側の一方的な論理ではなく、相手の立場、視点に立って、「どう」受け取られるのか、入念に検討したうえで、メッセージ内容や伝え方を工夫していく必要があるのでしょう。
(by インディーロム 渡邉修也)