マーケティング再入門
「販売促進の考え方・その4」
1,080円の商品を80円値引きしても、多くのお客様はそれほど得をしたとは感じてくれないかもしれません。むしろ原価50円以下であっても景品をもらった方が、お客様は得をしたと感じるでしょう。(さらに笑顔で「いつもありがとうございます。ささやかですが感謝の気持ちです」などと言葉も添えて渡されたら数倍価値はあがることでしょう。)
前回の後半部分では、90年代の缶コーヒーベタ付けの景品について、やや否定的な書き方をしましたが、商品にベタ付けしたり、その場で手渡しする景品は、実際に即効性がある施策ではあります。
グリコのキャラメルのオマケは、人々の記憶に残るという意味では「ひとつぶ300メートル」のコピーとともに、偉大なキャンペーン企画の1つだと思いますが、ここで冷徹に(ちょっと意地悪な視点で)、森永製菓の「チョコボール」の「おもちゃのカンヅメ」プレゼントと比較してみたいと思います。
ご存知の通り「おもちゃのカンヅメ」は、滅多に出ない金のラベル1枚か、たまにしか出ない銀のラベル5枚を集めないともらえない、子どもたちにとっては、かなりハードルの高いキャンペーンでした。(って過去形ですが、現在もやってます!素晴らしい!!もちろん、グリコのキャラメルも!)
それに対して、グリコのキャラメルはかならずオマケがついてくるのです。どちらかいうとオマケ目当てにグリコのキャラメルを買う、という状態だったと思います。(※注:子どもの頃の私の個人的な感覚です。)
缶コーヒーのベタ付けの景品と同じです。製品本体より、オマケで購入されている状態です。はじめた当初は、トップブランドである「森永ミルクキャラメル」の牙城を切り崩す目的があったのだと思われますが、知らず知らずのうちに、キャラメル本体の魅力よりも、オマケの魅力で買われるようになり、キャラメル本体のブランド価値を少しずつ毀損していったのではないでしょうか?
実際、森永製菓の方はオマケ競争に乗ることはなく、70年代前半に高級志向の「森永ハイソフト<ミルク>」を市場投入します。つまり土俵を変えちゃったわけです。
子ども向け菓子のオマケは、その後、仮面ライダースナックの怪人カード、ビックリマンチョコのシールなど、何枚集めたか、あるいはクラスの誰がコンプリートしたかといった、お菓子が食べたいのかカードやシールが欲しいのか、よく分からない方向へと向かいます。
こどものコレクション願望をくすぐる70年代型販売促進企画に比べると、グリコのオマケはかわいいものです。
グリコのオマケは、80年代以降、異形の進化を遂げ「食玩」が誕生します。こちらの割り切りはもの凄く、プラモデルに小さなガムが1粒入ってるだけという…。(※ちなみに「食玩」は、業界では「玩菓」と呼ばれるらしいです。)
今回は、おやじのノスタルジアみたいな話しになってしまいましたが、グリコのキャラメルにしても、チョコボールのおもちゃのかんづめにしても、現在でも続いているところが凄いです。どちらも国宝級の販売促進企画ですね!
(by インディーロム 渡邉修也)