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マーケティング再入門 
「販売促進の考え方・その3」

できるだけブランド価値を下げないような販売促進とはどうあるべきか?

90年代に缶コーヒー分野で「ボス」の「ボスジャン」や「ジョージア」の「やすらぎパーカー」などのプレゼントキャンペーンがありました。どちらもプレゼントキャンペーンの歴史に残るヒット企画で、ピーク時には「ボスジャン」で920万通、「ジョージア」はなんと4,400万通の応募があったそうです。

単純な応募総数で見ると「ジョージア」の圧勝のように見えますが、これらのキャンペーンが行われた90年代前半時点では、缶コーヒー分野では「ジョージア」が圧倒的なシェアを誇っており、92年に市場参入したばかりのサントリー「ボス」はまさにチャレンジャーの立場でした。

缶コーヒー分野でシールを集めて応募というスタイルを確立し、ジャンパーを当てるために、何十本どころかケース買いするような購買スタイルを作ったのは「ボスジャン」の功績であり、企画のオリジナリティ、その後の消費者キャンペーンへの影響度という点で、「ボスジャン」が当然評価されるべきだと思います。

その「ボス」の勢いに歯止めをかけるため、当選総数2万名という大判振舞いで一挙に巻き返しを図ったのが、「ジョージア」の「やすらぎパーカー」プレゼントであり、翌年当選総数をさらに3万名まで拡大した「あったかパーカー」プレゼントキャンペーンになります。

当選総数が数万名単位になると、自分にも当たるのではないかという期待感が高まるため、ヘビーユーザー以外の消費者も巻き込んで4,400万名という数字に繋がったのではないでしょうか。これはこれでトップブランドが採るべき対抗策として正しいやり方だったと思います。

いずれにしても「ボスジャン」と「やすらぎパーカー」は、多頻度購入とブランドロイヤルティ醸成という点、さらには2社の競争により缶コーヒー市場が活性化しマーケット自体が拡張したという点で、大きな成果を上げた消費者キャンペーン事例でした。

一方、缶コーヒーの販売促進策では、90年代にもう一つの流れがありました。缶コーヒーにもれなくミニカーやチョロQ、ミニフィギュアなどのオマケ(景品)が付いてくる“ベタ付け”キャンペーンです。

当時、ジョージア、ポッカ、UCC、ダイドーなどの既存の缶コーヒーブランドに対して、サントリー、アサヒ、キリンなどの新興勢力が割って入ってきた時期であり、また微糖やブラック、カフェオレなど、カテゴリーの細分化が進んだことで、コンビニの売り場スペース確保のために景品を付けることが盛んに行われるようになり、どんどんエスカレートしていったのです。

税込110円(当時)の缶コーヒーにミニカーが付くのですから、凄い話しです。

しかし、お金をかけたベタ付け施策はブランドロイヤルティの向上とは真逆の方向へ作用したと思います。ブランドに関係なく、面白そうなオマケが付いているものを買うという状態になってしまったからです。(次号へ続く)

(by インディーロム 渡邉修也)

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