マーケティング再入門
「マーケティング・コミュニケーションの復習・その5」
マーケティング・コミュニケーションの作業のうち、「コミュニケーションの設計」について復習してみます。
コトラー&ケラーの「マーケティング・マネジメント」では、コミュニケーションの設計について、①何を(メッセージ戦略)、②いかに(クリエイティブ戦略)、③誰が言うのか(メッセージの発信源)という3つの切り口で設計していくべきとしています。
メッセージ戦略については、あらかじめ設定されたブランドのポジショニングに従って、「誰に対して、どんなメッセージ」を発信していくのかということが重要です。
同じ製品・サービスであっても、相手(誰)のレベルや状態に応じて、伝えるべきメッセージも変わってくることは、本連載のその2、その3で復習してきました。
クリエイティブ戦略については、メッセージ内容をどのような表現で伝えていくべきかを検討していくことになりますが、その表現手法ついては、おおまかに「情報型アピール」と「変容型アピール」に分けることができます。
情報型アピールは、その名の通り、必要な情報(属性、ベネフィットなど)をきちんと伝えていこうとするものですが、いきなり結論を提示するよりも、まずは問題を提起し、広告を見る人自身に結論を出してもらう方がより効果的であることが知られています。
また、結論へ導いていく主張のしかたについても、ひたすら自社製品の優位点だけを並べたてる一面的主張よりも、デメリットやリスクなども伝える二面的主張の方が効果を発揮するようです。これは、教育水準の高い相手や競合他社のユーザーに対して有効な手法です。
受け手自身に結論を出してもらうこと、それもデメリットなどを説明し納得した上で、結論を出してもらうのが一番よいということです。
対して、変容型アピールは、製品・サービスと直接関係なさそうなベネフィットやイメージを提示することで、購入したいという感情をかきたて、購入動機へつなげていこうとするものです。
かつて、日産自動車の「セレナ」で、子どもたちが自然の中で楽しそうに遊ぶ映像とともに、「モノより思い出」というキャッチコピーが流れるTVCMがありましたが、これなどは変容型アピールの典型例かと思います。
3つ目のメッセージの発信源(誰が言うのか)については、コトラーの本では、中古車と新車のキャデラックでは宣伝するアナウンサーの「声」は違っていなければならないと説明しています。
広告に起用するタレントとブランドとのマッチングも重要です。原田知世さんとブレンディ、矢沢永吉さんと缶コーヒーボス、そしてプレミアムモルツなど。サントリーの場合は、缶コーヒーとビールで同じ矢沢永吉さんを起用することで個々の製品ブランドだけでなく、メーカーブランドのイメージも同時に強化することに成功していると思います。
(by インディーロム 渡邉修也)