マーケティング再入門
「チャネルについて考えてみる・その5」
前回「チャネルの統合」の話の最後に「個人的に、水平的マーケティング・システムに可能性を感じる」と書きましたが、今回はその続きです。
ここで、水平的マーケティング・システム(HMS)の定義を復習しておくと、「関連のない複数の企業が、新たな市場機会を開拓するために、資源またはプログラムを統合するものである」ということです。(「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント第12版」より引用)
ガソリンスタンドとレンタカー、時間貸し駐車場とカーシェアリング、書店とコーヒーショップなどが、典型例になります。
互いに隣接する分野で相互補完することで利用者側が利便性などを感じるもの、もしくは連携する企業同士が相互に経済的メリットを享受できるものが、全て対象となります。
(ここからは、マーケティングの復習というよりは、個人的な想いの世界に突入しますが、)上記の隣接分野、相互補完というキーワードを、「隣接=お隣さん」、「相互補完=助け合い、支えあい」と読み換えてみます。
そうすることで、シャッター商店街化したり若者が流出した地域の経済やコミュニティの再生プログラムに水平的マーケティング・システムの考えを適用することができそうな気がします。
ただし、垂直的統合と違って、強力なチャネル・キャプテンが存在しない水平的な関係においては、調整役がとても大切になります。表向きのリーダーも大切ですが、黒子的に立ち回り、利害関係や人間関係を調整する触媒・接着剤の役割を果たす人です。
既に各地で、地域活性化の先導役・黒子役として、課題解決に取り組んでいる方々がいて、皆さん頑張っていらっしゃるのですが、事業が軌道に乗り、儲かっている状態に達している例はまだ少ないようです。
複数の事例をみていくと1つの傾向が見えてきます。地域をどうにかしようという想いで「まずは出来るところから始めてみよう」という“手探り的スモール・スタート”の形態が多いということです。
想いを持った人はバイタリティがあり人間的魅力もあるため、比較的早期に地域内の賛同者も出現し、プロジェクトの立ち上がりも早い傾向がみられます。
しかし、そこが落とし穴でもあります。地域内で困っていることをなんとかしてほしいというお助けマン的な頼られ方をされ、ある意味、それにとらわれることで、採算性の検証や、本来は最初に行うべき現状把握のための調査・分析、地域資源の棚卸し作業が後回しなってしまうことが多いからではないかと推測されます。
こんなコラムを書いているから結論ありきなようで恐縮ですが、やはりマーケティング的な視点や戦略が欠落しているように思われます。起点となるのは、個人の想いでよいのですが、その想いを地域の皆で共有し発展させていく時に、参加メンバーが水平的マーケティング・システム的な発想を持って関わっていけるかがポイントだと思われます。(続きはまた次回に。)
(by インディーロム 渡邉修也)