マーケティング再入門
「標的市場を設定する際の注意点」
前回まで計5回に分けて「市場の細分化」の手法について復習してきました。
次のステップは、細分化した中で、自社がどの市場に参入すべきか、あるいは注力していくべきか、つまり「標的市場の設定」を行う段階となります。
標的市場を設定する際に注意すべき点はいろいろあります。
一番多いのは、せっかくデータや調査に基づき、市場を細分化し分析したにも係わらず、経営者やマーケティング責任者が、それまでの経験や勘にもとづき決定してしまうことです。
「アンケートの結果はあくまで現状分析に過ぎない、現状追認では、ありきたりな結論しか出ず、差別化できない」
唯我独尊型の創業社長に多いタイプです。起業しそれなりに成功を収めているため、みずからの嗅覚や独創的な切り口などを重視し、他人の意見やデータはとりあえず参考にはするものの、最後は自分の意見を押し通すことが多いようです。
「これまでのやり方を変えるのは危険だ」
過去の成功体験が足かせとなり、市場の変化に気づかないことも多々あります。
「データと現実とは異なる」
データは確かに全てではありませんが、かといって事実から目を背けるのはいけません。なぜそのようなデータがあるのか、真摯に検討してほしいものです。
上司やクライアント企業へ提案を行う立場の人は、データを用意するだけでなく、上記のようなバイアス(偏見)をいかに取り除き、どうしたら現実を直視してもらえるかを考えていかなければなりません。
いろいろなタイプの上司やお客様がいると思います。「わずかの情報だけで走り出し、結論を急ぐ」「偏見に基づく枠組みの中で思考し、現実からどんどんずれて行く」「自分の判断を過信する」「とり急ぎ実現可能なことだけをやろうとする」などです。
昨今は、優秀なリーダーは意思決定が早いというのが最上の価値のように言われますが、普段から社内外の意見や各種データに目を配り、偏見なく人の意見を聴き、正しく判断できるということは、本当に難しいことだと思います。
まずは耳を傾けること。現実を直視すること(データを含む)。
標的市場を設定するに当たって、全ての経営者、マーケティング担当者が注意すべきことです。
(by インディーロム 渡邉修也)