マーケティング再入門
「細分化の多様な切り口・その4」
前回は、細分化の手法の一つとして、オケージョンの切り口を変えることで、新たなビジネスの可能性を探ってみるやり方をご紹介しましたが、今回は、コンバージョンによる細分化を考察してみます。
コンバージョンというと、ウェブ解析の用語としてここ数年、急速に広まった用語ですが、もともとは、マーケティング用語して使われていたものを、ウェブ業界、特に、グーグルのウェブ解析サービスGoogle Analytics(グーグル・アナリティクス)などで使用されるようになってから、日本でも頻繁に使われるようになった用語です。
ウェブ業界では、コンバージョン率という言い方で、ウェブサイトの中で誘導したいと考えるもの(通販ページへジャンプするボタンのクリックやお問い合わせフォームへ誘導など)へ導いていくまでのページの到達率などを分析していくことが多いため、コンバージョン率のことを手っ取り早く「目標到達率」と説明してしまうことが多いわけですが、マーケティングにおけるコンバージョンの本来の意味は「転向」「転換」という直訳に近いものです。
ある市場で競争を行っていく際に、自社の商品・サービスが実際に購入され、さらにロイヤルティを獲得していく過程には、消費者側のコンバージョン(転向、転換)が、累々と積み重ねられます。
ビールのブランドを例に取ると、TVCMなど広告を使ってブランドを認知してもらい、ここで興味関心を持つ/持たないに分かれ、買ってみたい/興味を持ったが買うほどでもないという枝分かれがあり、スーパーに行った時点でTVCMで見た当該ブランドがあったとしても、横に並んでいるライバルブランドにセールがかかっていたり…と、手にとってもらうだけでも相当な取捨選択が行われることになります。
このようにして絞り込んでいった先には、強固なロイヤルティを持ってくれるお得意客の獲得という到達目標はありますが、ビールのような商品の場合は、お得意客のコンバージョン、つまり、他ブランドへの転向を抑止するための(ロイヤルティを維持するための)施策も考えていく必要があります。
マーケティングの定石からすると、むやみに新規顧客を追い求めるよりも、既存のお客様、それもヘビーユーザーと呼ばれるような上得意客のロイヤルティを高めた方が費用対効果が上がると考えられていますが、それでは、コンバージョン分析をする意味がありません。
マーケティングにおけるコンバージョンの作業は、競争市場において自社の商品・サービスが興味・関心をひき、比較検討され、購入され、ロイヤルティを獲得していく道筋のあらゆる局面の顧客側の選択肢を洗い出し、何が原因で、自社の商品・サービスが“選ばれなかったのか”という負の要因を洗い出し、検証していく作業になります。
全ての負の要因をつぶしていくことは、予算的、時間的に無理だとしても、肝となる部分を改善しただけでも、飛躍的に売り上げが伸びることがあります。コンバージョンは、マーケティングの予算配分を検討するための有効な手法となります。
(by インディーロム 渡邉修也)