マーケティング再入門
「顧客維持の重要性について」
前回は、カスタマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM)の大枠を復習しました。
かつては、参入市場の分析と新規顧客の獲得のための戦略・戦術の策定が、マーケティングの主な役割と考えられており、今でもそのように捉えている企業も少なくありません。
しかし、これまで見てきたように、顧客の生涯価値という視点で見た場合には、新規顧客の開拓・獲得も重要ですが、既存顧客の維持とロイヤルカスタマー化が重要であることが分かると思います。
コトラーの本の中でも、下記のような事実が指摘されています。
1) 新規顧客の獲得は、既存顧客の維持の5倍のコストがかかる。
2) 平均的な企業は、毎年10%の顧客を失っている。
3) (業種よっては)顧客の離反率を5%減らせば、利益は25~85%増加する。
4) 顧客の利益率は、維持されている顧客の生涯を通じ増加する傾向にある。
常に新しい新規顧客を追うのは、いかに懸命に営業努力を行っているように見えたとしても、実のところ効率が非常に悪い可能性があります。根性論ではなく、まずは現実を直視する必要があります。
顧客維持を強化するには、「1. 他社へのスイッチを防ぐ、高い障壁を作る」、「2. 顧客満足度を高める」という方法に分けられます。
前者の代表的な施策は、携帯電話キャリア各社の「2年縛り」の契約です。しかし、皆さんもよく知っている通り、2年縛りのペナルティーを超える、インセンティブを競合他社が用意した瞬間、堰を切ったように顧客は流出する可能性があり、さらに過剰なサービス合戦に突入します。
このやり方は、一時的には、顧客の固定化に効果を発揮しますが、長期安定は望めません。
やはり後者の「顧客満足度を高める」方法が王道といえるでしょう。
顧客満足を高める施策の1つに「苦情や不満に対する速やかで満足のいく対応」 というものがあります。
苦情を申し立てた顧客の54~70%は、不満が解消されれば再びその企業と取引を継続するそうです。
さらに、“迅速”かつ“建設的”に解決されたと感じた顧客の場合は、実に95%の高率での取引継続となります。
さらに、企業の対応の良さを「平均5人」に話す、というオマケもつくそうです。良い対応は、新規顧客の獲得にもつながるわけです。
(by インディーロム 渡邉修也)