マーケティング再入門
「顧客にとっての価値とは・その2」
前回は、顧客が感じ、認識する価値として「顧客知覚価値」(CPV)を復習してみました。
高い顧客価値を提供することで、顧客の満足度は上がり、ロイヤルティも高まります。しかし、1回の満足だけで、いきなりロイヤルティが形成されるわけではありません。
顧客は、広告、ショップでの店員の態度、製品自体、アフターサービス、電話でのやり取りなど、あらゆる接触機会を通じて、企業やブランドを評価し、ロイヤルティを高めたり、離反したりします。
顧客のロイヤルティは、こうした小さな接触の積み重ねによって形成されていきます。
ロイヤルティ形成のために、企業は「価値提案」を継続的に行っていく必要があります。
「価値提案」とは、やみくもに行うものでなく、その製品サービスが位置する市場セグメント内の競合他社の価値提案よりも、総体として上回っていることが重要です。
コトラーは、「ボルボのコア・ポジションは『安全性』だが、買い手に約束されているものは、耐久性、良質のサービス、長期保障期間など、単なる安全な車以上のものである」としています。
企業が買い手に約束する価値とは、値引き販売のような、すぐに他社が追随できるような単純なものではなく、上記のような複合的な価値、時間をかけて積み重ねによる価値、あるいは製品サービスそれ自体のクオリティの高さです。
こうした価値を継続的に、買い手に提供することを約束できるような「価値提供システム」を構築することで、長期的/安定的なロイヤルティの形成が可能になります。
コトラーは、買い手に対する約束が守られるかどうかは、企業が価値提供システムを管理する能力にかかっている、としています。
また、多くのマーケティング担当者が、自社の製品サービスを競合他社のものと差別化するためのスローガン作りにばかり熱中していることに警笛を鳴らし、製品やサービスのパフォーマンス、品質改善などのさまざまなビジネス・プロセスに目をむけ、影響を与えられるようにしていくべきとしています。
さらに、コトラーは、顧客満足だけを追求することが目標になってしまうのは問題であり、従業員、ディラー、供給業者、株主といった「顧客以外のステークホルダーが納得できる水準の満足を提供することを前提に、総経営資源の枠の中で、高水準の顧客満足の提供に努めるべき」としています。
(by インディーロム 渡邉修也)