マーケティング再入門
「顧客にとっての価値とは・その1」
「顧客を自社の企業文化の中心に据えなさい」とは、シスコシステムズのCEOジョン・チェンバースの言葉です。
この言葉は、フィリップ・コトラーの「マーケティングとは、顧客の価値と満足を理解し、創造し、伝え、提供すること」というマーケティングの定義と、完全に呼応しています。
顧客を満足させてこそ、企業は利益を得ることができ、その繰り返しで企業は存続できるわけです。
今回と次回は、「顧客価値」について、復習してみたいと思います。
顧客価値は、企業側が考える独りよがりの価値とは異なります。コトラーは、顧客が感じ、認識される価値という意味を含ませて、「顧客知覚価値」(CPV:Customer Perceived Value)と表現しています。(※顧客知覚価値は「純顧客価値」という言い方をされることも多いようです。)
「顧客知覚価値」は、下記の式で求められます。
[顧客知覚価値]=[総顧客価値]-[総顧客コスト]
「総顧客価値」とは、市場で提供されるモノやサービスに対して、顧客が期待する経済的、機能的、心理的なベネフィットを総合し、金銭的価値として知覚されるものであり、具体的には、下記のような価値が含まれます。
<総顧客価値(あるいはベネフィット)>
・製品価値(製品自体の価値:機能・信頼性など)
・サービス価値(付帯サービスの価値:保守・メンテナンスなど)
・従業員価値(従業員の応対、パーソナリティによる価値:対応力など)
・イメージ価値(ブランドイメージなどによる価値)
一方、「総顧客コスト」とは、提供されるモノやサービスを評価し、入手し、使用し、廃棄する過程において顧客が見積もったコストを総合したものです。
<総顧客コスト>
・金銭的コスト(製品価格・維持費・配送費など)
・時間的コスト(納品までの日数、機器の使用を把握するまでの時間など)
・エネルギーコスト(製品を探す手間、購入手続き、持ち帰りの労力など)
・心理的コスト(社内の根回しや稟議など)
総顧客価値から総顧客コストを引いた差が大きければ大きいほど、顧客が知覚する価値も大きくなります。つまり、顧客の購買意欲も高まります。
マーケティング戦略は、上記の4つの価値と、4つのコストを増減させることで顧客が知覚する価値を増大させ、顧客の購買意欲を高めていくかという視点で、検討していくことになります。(もちろん、利益を確保した上での話しです。)
(by インディーロム 渡邉修也)