マーケティング再入門
「マーケティングの価値判断とは」
前回は、「マッキンゼーの7S」を紹介しつつ、戦略は、事業を成功させるための7つの要素の1つでしかないことをを学びましたが、そもそも成功したかどうの判断はどのようにすべきなのでしょうか。
マーケティング施策の1つ1つが成果を上げたかどうかは、活動基準原価計算(ABC:Activity Based Costing)によって判断していきます。
1970年代までは、コスト計算をする際には、原材料、人件費、配送料などの直接費をベースに計算を行っていましたが、企業の活動に占める間接費の比重が高まってきた1980年代以降は、製品やサービスを提供するための間接コストを活動単位別に分割し、個々の活動ごとの基準を用いてコストを産出した上で原価計算を行うようになってきました。
ここでは、ABC(活動基準原価計算)の詳細については省きますが、評価基準は、個々の活動ごとに検討した上で決めていかないと、意味がないということだけ押えておいてください。
実際のところ、マーケティング投資に関する価値判断は、なかなか難しいものです。
コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメントの中でも、「企業は通常、株主価値の最大化よりも利益の最大化を重視する」と前置きした上で、ピーター・ドイルの「価値ベースのマーケティング戦略論」を紹介しています。
ドイルは、マーケティングとは、単に市場シェアや消費者認知度の上げ下げといった短期的/部分的な結果を求めるような業務ではなく、「株主価値」にどれだけ寄与したかで判断されるべきものだと主張しています。
「株主価値」とは、その企業が将来どれだけのキャッシュフローを生み出すかを現在価値で評価したものが企業価値であり、株主価値はそこから負債を差し引き、株主に帰属する価値を求めたものになります。(株主配当の多寡ではありません!)
2000年代前半のアマゾンが赤字の連続であったにも関わらず、株主価値が高い企業として評価されていたのは、アマゾンの成長戦略とマーケティング投資に対する市場の評価であったと、ドイルは本の中で言及しています。
(by インディーロム 渡邉修也)