マーケティング再入門
「企業のミッションとは・その2」
今回は、ミッションの策定方法について。
コトラーによると、ミッション・ステートメントは、ビジョン、すなわち次の10年ないし20年を指し示しつつ、それでいてほとんど「実現不可能と思えるような夢」を込めた時に、最も威力を発揮するそうです。
そうした典型例として、かつてソニーの盛田昭夫が掲げ、社員を鼓舞した「いつでもどこでも好きな音楽が聞けるように」という目標をあげています。
また、良いミッション・ステートメントには3つの特徴があるそうです。
第1に、限られた数の目標に的を絞っていること。
登るべき山は、頂上が霞んで見えないくらい高くてもよいのですが、2つも3つも山があっては、社員もどの山を登ればよいのか混乱してしまいますね。
第2に、企業が大事にしたいと考える主要な理念と価値を強調していること。
理念と価値がしっかりと強調されていることで個人の裁量の幅が限定され、従業員は一貫性のある判断や行動をとることができるようになるそうです。
第3に、企業が対象とする主要な競争領域を明確化していること。
競争領域については、「産業領域」「製品およびアプリケーション領域」「コンピタンス領域」「市場セグメント領域」「垂直的領域」「地理的領域」などが考えられ、どの領域で競争をおこなっていくのか、明確にしておくべきだと言っています。
なお、事業内容が変化した場合は、ミッションも適宜変更していくことも必要です。(もちろん、コロコロ変えるのは論外です。)
卑近な例で恐縮ですが、当社の場合、創業当時は、受託製作案件がほとんどだったこともあり、「誠意あるもの作りと、期待を上回るクオリティで、お客様に最大限の満足をご提供する」というものを使っておりました。
しかし、その後、アンケートメーカー、ドリルメーカーという独自のサービスを開始したことで、「お客様」という言葉が指し示す範囲が当社の中で拡張されました。先の競争領域の中の「製品およびアプリケーション領域」に変更が生じたわけです。
そんなわけで、現在の当社のミッション・ステートメントは、少々こっぱずかしいのですが、下記のようなものになっています。
響き合う関係のデザイン
インディーロムは、人-企業-社会の豊かな関係をデザインする会社です。
私たちインディーロムは、互いが共感できる可能性の仕掛けを提供します。
優れたプロダクト、サービス、エクスペリエンスを創造していきます。
わたしたちは、画一的なありきたりのプロデュースから遠く離れ、
確かなリサーチ、グラフィック、技術力、そして鋼のような情熱によって、
うるおいある関係、響き合う関係を構築していきます。
今回の原稿を書きながら、5年程前に改訂した上記のミッションが現在でも有効かどうか、検証をしなければと思った次第です。
皆さんの会社のミッション・ステートメントは、陳腐化してませんか?
(by インディーロム 渡邉修也)