マーケティング再入門
「企業のミッションとは・その1」
前回は、コア・コンピタンス、ケイパビリティ、ビジュナリーカンパニーについてご紹介しましたが、今回は、その関連の話題として、企業のミッションについて学び直しをしてみたいと思います。
コトラー&ケラー本の中では、企業ミッションを明確化するためには、ピーター・ドラッカーの定番の質問に答えていくのがよいと書かれています。
せっかくなので、ドラッカーの「エッセンシャル版 マネジメント 基本と原則」(P.F.ドラッカー、ダイヤモンド社)から拾ってみましょう。
・われわれの事業は何か
・顧客は誰か
・顧客はどこにいるか、何を買うか
「われわれ」という言い方が強調されているのでお気づきかと思いますが、企業のミッションを、経営層だけでなく全従業員に浸透・定着させていくことがいかに大変なことか、ドラッカーの言葉の端々ににじみ出ておりますね。
ドラッカーがここで強調しているのは、今日の企業においては、「意思決定」というものが、経営層だけなく、組織のあらゆる階層で日々行われており、それらの積み重ねが企業の盛衰を左右するということです。
つまり、部署や人によって、意思決定のベクトルが違っていると、矛盾が生じたり、反対方向へ無駄な努力をしてしまい、損失が多くなるということです。
共通のものの見方、理解、方向づけ、努力を実現するには、「われわれの事業が何か、何であるべきか」を定義することが不可欠です。
上の3つは、企業のミッションを策定する際の基本中の基本ですが、ドラッカーは、そこに安住してはならないと警告を発します。
・いつ問うべきか
事業というものは、常に陳腐化する可能性があり、成功している時にも常に、事業が何か、何であるべきかを問い続けなければならないと言っています。
・われわれの事業は何になるのか
また、自分たちの事業がこれからどうなっていくのか、外部環境を分析し、軌道修正をしていく必要があります。
・われわれの事業は何であるべきか
「何になるのか」だけでは軌道修正は出来ても、イノベーションを起こすことはできません。「何であるべきか」という問いも大切です。
・われわれの事業のうち何を捨てるか
今日有効であったものが、明日以降も有効であり続ける保証はありません。企業の使命にそぐわなくなった事業は廃棄していくことになります。
今回は、ドラッカーから、ミッションを策定し運用する際の基本的な心構えを学びましたが、次回はミッションの策定方法について、もう少し掘り下げてみようと思います。
(by インディーロム 渡邉修也)