マーケティング再入門
「マーケティング・コンセプトを考える・その1」
「顧客の声」に耳を傾け、顧客のニーズを満たすようなベネフィットを提供すること。
この基本的な考え方は、60年代後半から70年代前半にかけて、プロダクト・アウトから、マーケット・インへと転換して以降、マーケティングにおける不動の考え方になっています。
しかし現実には、市場の全ての人を満足させることはなかなか困難なことです。
そのため、70年代~80年代には、調査・分析でニーズを大づかみに把握した上で、平均的なニーズを満たすスペックを備えた“当たり外れの少ない製品”を作る流れが出てきました。
平均的ニーズを満たすような製品(競合他社より、品質がよく、価格も妥当で、デザインもそこそこ良い等)を用意し、適切な広告宣伝を投下すれば、売り上げを最大限に拡大できるはず、というものですが、今の目で見ると、やはり「よいものさえ作れば売れるはず」というプロダクト・インの考え方が色濃く残っているように思えます。
90年代以降は、単に平均的なニーズだけを満たすだけでは競争に勝ち抜けないという反省から、様々なマーケティングの試みが実験されていきます。
そして、2000年代以降になると、90年代に試行錯誤したマーケティング・コンセプトの種が、インターネットやモバイル端末などのIT技術と組み合わされることによって、具体的な成功事例として私たちの周りに沢山でてくるようになりました。
コトラー&ケラーの本には、21世紀以降にマーケティング・マネジメントを転換することで、成功した事例がいくつか紹介されいますので、これから何回かに分けて、私の感想などを交えながら見ていきたいと思います。
まずは、最初に紹介するのは、パソコンのデルの事例です。
デルは、「市場の全ての人を満足させることは不可能である」という発想からスタートしました。
つまり、平均的なニーズに即したスペックの製品を用意して、同じ製品を市場で大量に売りさばこうという発想ではありません。
お客様が、自分が欲するスペックを、自分で組み合わせた製品を、出来るだけ安く、出来るだけ早く、お客様の元へ届ける。
デルの革新性は、パソコンをネット通販するというとことにあったわけではなく、先にあげた、全ての人を満足させるのは困難であるというところからスタートし、それを解決するために、ターゲットを絞り込んだDM戦略、購入者自らがスペックを調整できるネット通販システムなどの組み合わせにあるのです。
(by インディーロム 渡邉修也)