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「高齢社会でのダイバーシティ」
前回は、ジェロントロジー(老年学、加齢学)についてご紹介しましたが、今回は、その続きで、高齢社会におけるダイバーシティについて。
「ダイバーシティ・マネジメント」という考え方は、日本でも90年代から大企業を中心に少しずつ導入されてきました。
男女雇用均等法に伴う女性の管理職への登用、生産拠点の海外移転に伴う外国人労働者の労務管理、国内事業所への外国人労働者の受け入れなどです。
そこから15~20年が経過し、今回は定年延長・継続雇用制度・65歳雇用義務化による「エイジ・ダイバーシティ」とい課題が浮上してきました。
しかし、上記はいずれも、制度やグローバル化の波の中で背中を押されるように、いわば後付け的に導入されてきたダイバーシティ・マネジメントです。
高齢化ではなく、既に高齢社会に突入してしまった日本の社会は、労働人口をキープしていくために、シニア、女性、外国人労働者(移民含む)、ニート、休職者の復職など、考えつくあらゆる層を労働者と迎え入れていく必要があります。
そうした多様な労働者で構成される企業を想定した場合に、企業経営の根幹にダイバーシティという考え方が据えられているか。そこが問題になります。
ダイバーシティの定義はいろいろありますが、最も基本的かつ狭義なものとしては、米国雇用機会均等委員会(EEOC:Equal Employment Opportunity Commission )による「ダイバーシティとは、ジェンダー、人種、民族、年齢における違いのことをさす」というものです。
近年では、上記に社会階級、宗教、国籍、性的傾向などを加えたカルチャラル・ダイバーシティ。
さらには、パーソナリティ、価値、態度、嗜好、信条など、外部からは識別しにくい事柄も含めて考えるべきという深層的ダイバーシティまで登場しています。
いったいどこまで対応すればいいのかと、途方に暮れるかもしれませんが、まずは、上記のような諸点においてそれぞれ人は違うのだという現実を直視することからスタートしていくということでしょう。
その際、注意したいのは、ダイバーシティの推進が、免罪符的なアファーマティブ・アクション(差別是正措置)に陥らないようにすることです。
この文章の前半にあえて「女性の管理職への登用」という表現をしましたが、これは80年代後半から90年代によく使われてきた表現であり、アファーマティブ・アクションの典型例ではないでしょうか。
現在、若い女性へのアンケートで、管理職を目指すより、主婦になりたいと回答する人が、90年代よりむしろ増えていることが、このことを裏付けているのではないでしょうか。
(by インディーロム 渡邉修也)