統計・世論調査を読む
「21世紀成年者縦断調査」から・その4
前回、予告として「中高年者縦断調査」を取り上げると書きましたが、先日3月21日に厚生労働省から「21世紀成年者縦断調査」と「21世紀成年者出生児縦断調査」、2つの調査を合わせてまとめた「特別報告書」が発表されましたので、こちらの方を先に見ていくことにします。
以下、報告書から、かいつまんでご紹介します。
「妻の就業形態が、『パート・アルバイト』、『派遣社員・契約社員・嘱託』では、『正規雇用』に比べ、第1子が生まれにくい」
うーん、いきなり、へヴィーな報告です。報告書によると、婚姻後も妻が世帯収入のある程度を分担する割合がここ10年間に増えた事実を前提として、育児休業制度の有無が、第1子出生率に影響しているとみています。つまり、正規雇用/非正規雇用間で、育児休業制度の恩恵にあずかっているか否かで差が出ているということでしょうか。
「第1子の出産時に正規雇用を退職した女性と育休制度を利用して正規雇用を継続した女性は、第2子出生確率が高い」
報告書では「第1子の出産前後に無職」であった女性が第2子を生む確率を100%とした場合に、
・出産退職をしたグループで、出産前に正規雇用であった女性の出産確率
………118%
・出産後も就業を継続したグループで、育児休業を取得して正規雇用を継続
した女性の出産確率………112%
一方、第1子の出生前後で、非正規雇用を退職した女性、育児休業を取得せずに正規雇用を継続した女性、非正規雇用を継続した女性では、第2子の出産確率は、出産前後に無職であった女性と同程度(つまり100%前後)で、上の2つのグループよりも低くなっているようです。
つまり育児休業をきちんと取得できる環境さえ整っていれば、第2子出生率も高まることが期待される、ということでしょう。
以上のようなことは、これまでの実感として語られてきたわけですが、縦断調査という10年間の追跡調査からも、有意に認められたというわけです。
「第1子の出生後に、夫の育児参加が多いほど第2子が生まれやすい」
これも世間ではよく言われ、思われていることです。
報告書では、さらに、「世帯収入に対する夫の収入割合が4割を下回る場合には、夫の家事頻度・育児頻度が高いほど、第2子の出生確率が高い」としています。
これは、夫が稼いで、妻が家事・子育てをするという、過去の日本社会の家族のあり方から、夫と妻もそれぞれ稼ぎ手として世帯収入の一定以上の割合を分担し合い、それに応じて、家事・子育ても同様に分担する、という夫婦が増えつつあり、そうした夫婦間の収入面、家事・子育て面での分担がうまく機能すれば、第2子も夢じゃないといいたいみたいです。
うーん、この報告書、厚生労働省作成なので、育児休業制度の拡大・定着を図りたいという思惑が若干にじみ出ている感もありますが、実際、我々現役世代は、夫婦ともども働きつづけなければ食っていけない世の中であるようです。
ま、私の感想はさておき、興味深く、いろいろなことを考える上で参考になるデータだと思いますので、是非皆さんもご一読ください。
(by インディーロム 渡邉修也)