統計・世論調査を読む
「21世紀成年者縦断調査」から・その3
今回は、「21世紀成年者縦断調査」の内、女性の10年間の動きについて見ていくことにしましょう。
調査開始時の10年前(平成14年)の時点で、「独身者」だった「女性」2,955人の中で、この10年間で少なくとも1回以上「結婚した」人は1,435人で、48.6%になります。これは、男性の39.0%を9.6%上回っています。
単純計算すると、女性は2.06人に一人が、男性は2.56人に一人が、この10年間で結婚を経験したことになります。
うーむ、この0.5人の差は、どう解釈すればよいのでしょうか?女性は外国人男性と結婚する率が高いのか、あるいは、2度、3度と結婚することが多いのか。
残念ながら、この調査では、どんな人と結婚したのか、離婚回数に関する質問がないので、実際のところは分かりません。
男性の場合は、正規雇用/非正規雇用別で見た場合に、結婚した/してないに明らかな差が見られましたが、女性の場合は、仮に非正規雇用であっても、それが結婚や出産を契機に、非正規に変わったのか、出産・育児休暇が明けて、正規雇用に復帰したのかが定かではないため、ここでは触れないことにします。
女性回答者2,983人(※注)の内、この10年間に子どもを産んだ女性は1,477人で49.5%です。10年間の間に、約半数の女性が、1回以上出産を経験したことになります。(※注:先の10年前に独身だった女性の数「2,955人」とは異なります。)
ちなみに、この調査がスタートした平成14年10月末に20~34歳だった女性は、第10回目の調査が行われた平成23年10月末には29~43歳になっています。一番若い層が29歳であることから、今後もこの数字はある程度は伸びていくはずですが、その増加率は徐々に鈍化してことになります。
出産した1,477人の内、10年間で「1人だけ」生んだ人は26.2%、「2人」は50.4%、「3人」は19.6%、「4人以上」は3.9%、という比率です。
この数字だけ見ると、一人の女性で2人くらい産んでいそうな錯覚をしてしまいそうですが、この縦断調査だけ見ても、10年間に半数の女性しか出産をしていないわけなので、単純に半分と考えると、女性一人に対して1人位になっちゃう勘定です。
こうした話題でよく出てくる「合計特殊出生率」、つまり一人の女性が一生に産む子供の平均数は、最新の2011年データで「1.39」となっています。
ちなみに、2012年の出生数は103万3千人。これは統計データが残っている1899年以降では最少の出生数だそうです。対して、死亡数は124万5千人でした。
(出生103万3千人)-(死亡124万5千人)=-21万2千人となり、1年間に日本の人口は、21万2千人も自然減したことになります。
この自然減、考えてみたらものすごい数字です。ちょっとした規模の地方都市が、毎年1つずつ消えているのと同じな訳です。法定人口30万人超で中核都市、20万人超で特例市となります。太田市(群馬県)が法定で21万6千人、つくば市(茨城県)で同21万4千人。文京区、渋谷区、港区、荒川区は、法定では21万人未満です。
この21万2千人という数字は、こうした自治体と同じ位の規模になるわけで、深刻の度合いは大きいと思います。
うーん、この人口の自然減、どうにかならないものでしょうか。
次回は、同じ厚生労働省の調査で「中高年者縦断調査」というのが、最近発表されたようなので、どんな内容か覗いてみたいと思います。
(by インディーロム 渡邉修也)