統計・世論調査を読む
「衆院選と世論調査」
衆院選が終わり、自公政権に戻ることが決定しました。
この連載は、アンケート調査の話題を中心にお届けしておりますので、今回は、事前の世論調査と実際の選挙結果との比較検証をしてみたいと思います。
早速、各党の世論調査時点の支持率と選挙結果を見てみましょう。
下の一覧は、読売新聞社と朝日新聞社が、選挙の1週間前に行った世論調査における「比例区」政党別支持率と、比例区180議席の実際の投票結果です。
(括弧内は、比例区180議席に対する各党の議席獲得率)
読売 朝日 比例区議席数
自民党 29% 22% 57(31.67%)
日本維新の会 11% 8% 40(22.22%)
民主党 12% 14% 30(16.67%)
公明党 6% 5% 22(12.22%)
みんなの党 5% 2% 14( 7.78%)
共産党 3% 4% 8( 4.44%)
日本未来の党 3% 2% 7( 3.89%)
社民党 1% 1% 1( 0.56%)
新党大地 1% 0% 1( 0.56%)
比例区だけを見ると、日本維新の会が事前予想以上の勝利を収めたしたのが目立ちます。公明党も世論調査よりも比例区で多く獲得していますが、これは基礎票の違いによるものでしょう。
また、小選挙区と比例区を合わせた議席数予想ですが、事前の大手新聞社の世論調査に基づく予想記事では「自公で320超の勢い」という見出しを多くみかけました。今回は、ほぼ予想通りの結果となったようです。
小選挙区と比例区を合わせた、自民党の支持率以上の議席獲得数は、前回の民主党の大量議席獲得の時にも指摘されたように、1位の者だけが当選し、あとは足切りされる小選挙区制という制度自体の問題でもあるでしょう。
目先を変えて、ネットでの世論調査と実際の結果を比較してみましょう。
以下は、選挙前日15日夜のロイターオンライン調査の数字です。
質問は「総選挙で誕生すべき新政権の中心となるべき政党は」というもの。
自民党 52%
日本未来の党 36%
日本維新の会 4%
民主党 2%
みんなの党 2%
共産党 2%
公明党 1%
社民党 ‐%
その他 1%
ロイターオンラインの投票数を見ると約19万票であり、この数字だけ見ると大手新聞社の世論調査の有効回答数(上の讀賣で1070人、朝日1114人、NHK2679人)と比べる桁違いに多く、一見すると、ロイターの方がより多くの意見を反映しているようにも思えます。しかし、実際はそうではありませんでした。
統計の世界では、とても有名な「1936年アメリカ大統領選挙の予測と結果」に関する話がありますのでちょっとご紹介しておきましょう。
週刊誌「リテラリー・ダイジェスト」は、約230万人の回答結果を基に共和党のランドン候補が当選することを予想しました。
一方「アメリカ世論研究所」(現在のギャラップ社の前身)は、データに基づいた丁寧な標本抽出を行い、わずか3000サンプルであるものの、民主党のルーズベルト勝利を予測し、事実そうなりました。
この時以来、統計は回答者数(サンプル数)の多さが重要なのではなく、サンプルの抽出が、いかに母集団の実態を正確に反映したものであるかが重要なのだということになり、現在に至る世論調査の理論と実践、そして、改良の契機になったという話です。
ネットに近い業界にいる私も、今回の選挙で、このギャラップ社の話を思い出し、まだまだネットでの意見集約、世論形成というのは道のりが長いなと感じた次第です。
(by インディーロム 渡邉修也)