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アンケート再入門 
「第23回 自由回答について・その2」

今回は、自由回答の1件1件の内容について、どのように読み解いていくかということを書こうと思いますが、最初にお断りしておくと、正直なところ、きちんと読み込んでいくことは相当に困難を極めます。

大変な作業ですが、一方では、選択肢式の設問では抜け落ちてしまうニュアンスの部分を拾うことができるメリットがあります。回答者が、どんな点に注目して、賛成/反対の選択をしたのか、その思考の流れが見えてくるのです。

下記は、架空の会社で、外資系のライバル会社と合併すべきかどうかを問うた架空のアンケートです。

Aさん:「合併すべきだと思う。ただし、雇用は守らなければならない。福利厚生なども現在と同等かそれ以上の水準が確保されるという条件つきでのことだ。」

Bさん:「合併は反対。雇用は守らなければならないと思う。福利厚生も現在と同等かそれ以上の水準が確保されるべきだ。」

Cさん:「合併には条件付きで賛成。雇用は守らなければならないと思う。福利厚生も現在と同等かそれ以上の水準が確保されるべきだ。」

上記の3名は、合併に賛成か反対かという選択肢式の設問があったとしたら、「賛成2件」、「反対 1件」というふうにカウントされると思います。

それでは、個別の意見に、マーカーを引きながら、それぞれの意見を拾って行きましょう。

・雇用は守らなければならない   3件
・福利厚生は現在と同等かそれ以上の水準が確保されるべき   3件

あれれ、実は皆さん同じ意見でしたね~。こんなこともあるわけです。

現実には、もっともいろんなバリエーションがあって、

Dさん:「合併に賛成。日本は第3の開国の時期に来ている。我が社の雇用は絶対に守らなければならない。福利厚生のレベルも落としてはいけない。そのへんを危惧する意見もあるが、鎖国しても世界に取り残されるだけだ。私は、我が社の社員と技術力が、世界と伍して戦える可能性を信じている。」

このDさんは、一見自分の意見を持っているように見受けられますが、結果としては、

・雇用は守らなければならない   4件
・福利厚生は現在と同等かそれ以上の水準が確保されるべき   4件

と各1件ずつカウントが増えるだけですね。

・日本は第3の開国の時期   1件
・鎖国しても世界に取り残される  1件
・社員と技術力の可能性を信じる   1件

あえて拾うと、この3つも拾うこともできますね。

Eさん:「合併には慎重を要する。雇用をいかに守るのか議論を尽くすべきだ。福利厚生も同様だ。結論を急ぐことはない。各分野での影響度を多面的に検討し、見極めるべきだ。」

このような慎重論もあることでしょう。このEさんの場合も、

・雇用は守らなければならない   5件
・福利厚生は現在と同等かそれ以上の水準が確保されるべき   5件

と各1件ずつカウントを増やすべきでしょうか?

Eさんの場合は、一歩引いた言い回しをしているので、「雇用を守るべき」とははっきり言ってはいませんが、「雇用をいかに守るのか議論を尽くすべきだ」と言っているので、やはり「守るべきだ」と考えているようにも取れます。
福利厚生も同様です。うーん、なかなか判断に迷うところですねぇ~。

こんな風に個別意見を見ていくと、とても時間と手間がかかります。

大変な作業ですが、選択肢式の設問だけでは分からない、回答者が「なぜ」そう考えたのかが、どのような問題意識でもって、賛成、反対、態度保留を選んだのかが分かります。

つまり、論点の理解度です。
マーケティング調査では、その商品の機能や特徴の理解度ということになりますし、政策等に関する世論調査では、その国の民度が浮き彫りにされるでしょう。

結論よりも、結論に至る過程の「なぜ」「どうして」を重要視する調査も多いわけで、個々の意見を読み込んだ中から、新たな商品のアイディアが発想されることも少なくありません。

自由回答の設問は、手間はかかりますが、宝のような意見が埋まっている可能性があり、そこが魅力であるわけです。

<“アンケートメーカー”ご案内サイト>
http://enqmaker.jp/

(by インディーロム 渡邉修也)

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