アンケート再入門
「第20回 複数選択肢の集計」
前回は、クロス集計を中心に書きましたが、今回は、 複数選択肢の集計についてです。
選択肢式の設問には2種類あり、選択肢の中から1つだけ選択する「択一式」と複数選択できる「複数選択式」に分けられます。
複数選択の設問を設定する意図としては、「可能性のある要素」を出来るだけ拾い集めるということがあります。
例えば、「あなたがスマートフォンを選ぶ時、検討する点はなんですか?(いくつでも)」という設問に対して、
□ キャリア
□ 機種ブランド
□ OSの種類
□ 価格
□ デザイン
□ 操作性
□ 持った感じ
□ 画質
□ 画面サイズ
□ 心拍計つき
□ 万歩計つき
□ 体脂肪計つき
□ 線量計つき
□ 指紋・静脈認証つき
□ その他( )
回答者によっては、全部チェックを入れる人もいるでしょう。
集計の際には、有効回答数を「標本数」として、各選択肢が何個あったかをカウントし、標本数に対する構成比をはじき出していきます。
「択一式」(SA:シングルアンサー)の場合は、各選択肢の構成比を合算すると100%になりますが、「複数選択式」(MA:マルチアンサー)の場合は、当然のことながら、100%を超えてしまいます。
弊社でも、たまにアンケートの集計作業を学生アルバイトにお願いすることがあるのですが、驚いたことに、結果をグラフ化する際に、一所懸命に円グラフにしようとする学生がいるのです。
これは、エクセルは使えるが、根本的なことを勘違いしている例です。
「複数選択式」のグラフは、基本は「棒グラフ」になります。
標本数に対して各選択肢がそれぞれ何パーセントあったかというものです。
その後、例えば「万歩計つき」にチェックした人のみを抽出して、その中で、性別や年代別の構成比を割り出していった場合には、円グラフで表現することができます。
「複数選択式」の設問は、「可能性のある要素を拾い集めること」と書きましたが、複数選択の設問の後には、出来れば「1つに絞り込ませる」ための「択一式」の設問を用意すべきでしょう。
「それでは、検討点の中で、実際にあなたがスマートフォンを購入する際、最も重視することはなんですか(1つだけ)」といった設問です。
複数選択の設問で、最も多かった選択肢で結果は出ているじゃないかというむきもあるかもしれませんが、それは違います。
上の設問でいえば、「キャリア」や「OSの種類」は恐らく上位にくるでしょうが、1つだけとなると話は別です。デザインだったり、万歩計であったり、その回答は分散するでしょう。だから「択一式」の設問を用意する必要があるのです。
余談になりますが、複数選択の設問には、要素を拾い集めるだけではなく、「可能性の呈示」という意図も含まれます。
万歩計、体脂肪計ときて、線量計があると、へぇ、最近のスマホはすごいなあ、放射線量まで測れるのか!と気付くわけです。
アンケートをどの時点で実施するのかにもよりますが、購入検討者に対して可能性を呈示し、検討ポイントに加えてもらいたい時に、複数選択の設問を設置するわけです。この話は、設問作成の回でも書きましたのでおぼえていらっしゃる方も多いと思います。
以上、今回は、集計というよりも、複数選択の設問を設置するの意図の方に話の重点が寄ってしまいましたが、まとめると、複数選択の場合は、標本数に対する回答数が何パーセントあるか、グラフは棒グラフが基本、性別や年代別などの属性でクロス集計する場合には、ターゲットとなる選択肢を選び、その選択肢についてクロスをかける、ということになります。
次回も、集計について引き続き検討していきたいと思います。
<“アンケートメーカー”ご案内サイト>
http://enqmaker.jp/
(by インディーロム 渡邉修也)