アンケートメーカー

アンケート再入門 
「第16回 質問のストーリーを考える・その2」

前回は、アンケートのタイトル、筋立て(=ストーリー)、選択肢の数・内容によって、結果が大きく変わってくるという話を書きました。今回は、その続きです。

アンケート調査には、回答者の意向や実態を知りたいという調査そのものを目的としたアンケートが多いわけですが、中には、調査というよりも、商品の機能や特徴を「伝える」ことに重点を置いたアンケートもあります。

例えば、次のようなアンケートです。

質問1:あなたは、普段から紫外線対策を行っていますか?(1つだけ選択)
 ○ 常に行っている
 ○ 日差しの強い時に行っている
 ○ たまに行っている
 ○ あまり行っていない
 ○ まったく行っていない

質問2:あなたが行っている紫外線対策はどんなものですか?(複数選択可)
 □ 日焼け止めクリーム
 □ サンローション
 □ フェイスパウダー
 □ つば広の帽子
 □ サングラス
 □ 日傘
 □ アームカバー
 □ ネックカバー
 □ 手袋
 □ ストール
 □ UVケアヘアードライヤー
 □ その他

質問3:紫外線が髪の毛のダメージにつながるのを知っていますか?(1つだけ選択)
 ○ 知っている
 ○ 知らなかった

質問4:UVケアヘアードライヤーに興味はありますか?(1つだけ選択)
 ○ 既に使っている
 ○ 興味があり、使ってみたい
 ○ 興味はあるが、使うことは考えていない
 ○ あまり興味がない
 ○ まったく興味がない

質問5:UVケアヘアードライヤーの「1カ月お試しモニター」に参加していただけますか?(1つだけ選択)
 ○ 参加したい
 ○ 興味があるので詳しく説明をききたい
 ○ 興味はあるが、モニター参加は考えていない
 ○ モニター参加は考えていない

いかがでしょうか? またまた、話を分かりやすくするために、かなり露骨で強引なストリーになっておりますが、ご勘弁を。

皆さま、既にお気づきのことと思いますが、質問2の中に、さりげなく(いや、わざとらしくか?)、選択肢に「UVケアヘアードライヤー」が忍ばせてあるわけです。(そして、シャンプーやリンスを意図的に省いてあることにも注目してください。)

質問1では、前振りとして、「これから皆さんの紫外線対策を訊いていきますよ」という宣言を行っています。ここでは、回答者は、自らの普段の紫外線ケアの状況を素直に回答していくことでしょう。

そして、質問2でも、普段自分が取っている対策を、1つ1つチェックを入れていくはずです。「え~っと、クリームに、ローションに、アームカバー、そうそうネックカバーも大切よね~。首が焼けたら、顔だけ白くても台無しだからね~」と順調に進んでいくはずです。

そして、異質な選択肢に出会います。「何これ?UVケアヘアードライヤー?へぇ、こんなのがあるんだ・・・」(ここでは、スルー)。

質問3以降なるなると、回答者は、このアンケートが消費者の皆さまに「UVケアヘアードライヤー」を知ってもらいたいがために用意されたアンケートであり、体験モニターの申込フォームであることに気づきます。

気づきはしますが、こんなことで騙されたと思うような、ナイーブな消費者は今の日本にはごく少数でしょう。メーカーの好感度はそれほどダウンするとは思えませんが、いかがでしょうか?

アンケート主催者側がこのアンケートで達成したかったことは、質問2で第1目標である「商品の存在を知っていただく」ということ、質問3、4では、興味・関心の高さを計ること、質問5で、体験モニターへの参加意向を確認すること、以上です。

そして、あわよくば、へぇ、こんなヘアードライヤーがあるんだと記憶にとどめていただき、願わくば、そのまま、価格.comで最安値の店を探し、即購入していただくこと・・・。まあ、ここまでは出来過ぎですが、商品の存在を知ってもらった時点で、充分かと思います。

こういった、選択肢に知ってもらいたいものを忍ばせる手法は、商品のマーケティング以外のところでも、よく使われています。

よく見かけるのは、「次の総理にふさわしいのは?」という世論調査。永田町では次期総理との呼び声が高くても、所詮は、村社会での話。国民に、名前や顔を覚えてもらうには、新聞やテレビ側で、世論調査の選択肢に入れ、有力候補の一角であることを演出していかなければなりません。

こうしたマスコミの皆さんの地道な協力(=宣伝)を得て、世論というものは形成されていくものなのです。

4月に実施された朝日新聞、讀賣新聞、日経新聞/テレビ東京、NHK、Yahoo!アンケート等々の内閣支持率調査でも、野田内閣は、前回と比べ支持率を下げています。
次か、その次の世論調査では、そろそろ「次の総理にふさわしいと思う人は?」と質問が用意されるかもしれませんね。

という訳で、アンケートは、単に実態把握のための調査だけではなく、「情報伝達」「広報宣伝」にも、利用されているという、お話しでした。

<“アンケートメーカー”ご案内サイト>
http://enqmaker.jp/

(by インディーロム 渡邉修也)

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