アンケート再入門
「第15回 質問のストーリーを考える・その1」
アンケートの質問項目を考える時には、筋立て(=ストーリー)を考える必要があります。
質問文の内容や、質問の順序によって、大きく結果が異なってくるからです。
まずは、アンケートの「タイトル」をどうするのか。これはとても重要です。
例えば、「最近のあなたの生活の変化について」、「東日本大震災後のあなたの生活の変化について」、「日本の復興・再生に向けたあなたの生活の変化について」という3つでは、回答者側の気持ちの引き締まり方が異なってきます。
また、回答するか、無視するかも異なってきますので、回収率も変化することでしょう。
1番目は、アンケート調査の趣旨が漠としすぎていて、自分が答えなくても暇な誰かが回答するだろうと無視する人が多くなりそうです。3番目は、とても具体的なテーマを掲げているのですが、“日本の復興・再生に向けたあなたの”というくだりが、既に回答者に対して、何がしかの要求、それも志や行動を暗に求めているようであり、この時点で、回答者を絞り込みすぎる懸念があり、調査結果もそれなりに偏ってくることが想像されます。
質問の順序も重要です。例えば、次のような質問が並んでいたとします。
質問1:あなたは、日本の復興・再生に向けて、何が重要だと思いますか?(複数選択可)
□ 被災者への直接支援
□ 被災自治体への公的な財政支援
□ 民間による直接/間接の支援
□ 日本全体の景気回復
□ エネルギー政策の見直し
□ その他
質問2:あなたは、これまでに日本の復興・再生に向けて、何らかの具体的な行動(個人の節電を除く)をとったことがありますか。(1つだけ選択)
○ ある ○ ない
質問3:今後、具体的な行動をとろうと思っていますか?(1つだけ選択)
○ 行動しようと思う
○ 行動しようとは思わない
○ わからない
質問4:今後、機会があったらボランティア活動に参加してみたいと思いますか?(1つだけ選択)
○ 参加してみたい
○ 参加するつもりはない
○ 活動内容による
○ よくわからない
いかがでしょうか? 話を分かりやすくするために、かなり露骨な誘導質問になっておりますが、そこのところはご容赦願います。
この様な筋立ての質問ストーリーになっていると、ボランティアに参加しないと、なんだか自分がとっても非社会的なダメ人間に思えてきますよね~。
ストーリーの筋立てと、質問の文面によって、結果が異なってくることは実感していただけたのではないでしょうか。
また、選択肢の数と、各選択肢の内容によっても、回答結果は影響を受けます。
とある統計団体のホームページのコラムで見かけたのですが、過去の内閣支持率調査で、「支持する」、「支持しない」の2択にした時には「支持」は30%となり、4択にしたところ39%に支持がアップしたそうです。
また同じ4択でも、選択肢の内容が「是非続けてほしい」「続くのはやむをえない」、「総辞職すべき」、「国会を解散すべき」の場合は、
・是非続けてほしい 3%
・続くのはやむをえない 56%
・総辞職すべき 21%
・国会を解散すべき 1%
・無回答 1%
となり、明確な「支持」とは言えないものの、その内閣の「継続の容認」が59%となった、ということです。
選択肢の数と内容によって、これだけ結果に差が出ることも、充分実感していただけたかと思います。
また、最後の4択の例については、3%の「是非続けてほしい」と、56%の「続くのはやむをえない」を強引に足し合わせて、59%の「継続の容認」としてしまう、結果報告の仕方、報道のされ方に、皆さん唖然とされたのではないでしょうか?
という訳で、アンケートのストーリー立て、質問文の内容、選択肢の数と内容によって、結果が大きく異なってくること。これらを意識した上で、アンケートの質問を考えて行きましょう、というお話しでした。
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http://enqmaker.jp/
(by インディーロム 渡邉修也)