アンケート再入門
「第10回 質問内容で結果は異なる」
アンケートの調査結果は、その質問内容と調査のタイミング、調査方法、対象者(回答者)により、大きく変わってきます。
調査方法と対象者による違いに関しては、前々回のこのコーナーで、TPPへの参加是非についての、新聞・テレビのマスコミによる世論調査と、ネットの世論調査とで、結果に大きな隔たりがあることをご紹介しました。
今回は、最近のマスコミによる世論調査を例に、質問内容によって、結果が大きく異なるということを取り上げてみたいと思います。
この1月21~22日にかけて、読売新聞社が行った世論調査で、「社会保障制度を維持するためには消費税率の引き上げが『必要』だと答えた人が63%に上った」と報じられ、驚かれた人も多いようです。
なぜなら、この1月13日に野田改造内閣が発足し、それを受け、各マスコミで13~14日にかけて、“改造内閣に関する評価”をたずねた世論調査では、「消費税増税の素案」に関しての回答結果は、下記のように、概ね「反対」が多かったからです。
読売新聞 賛成 39% 反対 55%
朝日新聞 賛成 34% 反対 57%
日経新聞 賛成 34% 反対 57%
産経・FNN 賛成 43% 反対 53%
NHK 賛成 26% 反対 38%
それでは、たった1週間の間に、世論がこんなにも変わるような政府の説明、国会での論戦が行われたのでしょうか。そんなことはありませんよねぇ~。
ニュースの見出しだけを見ていると、「読売の調査で、消費税引き上げ『必要』63%」ということだけで、おおっ、ホント?と思ってしまうかもしれませんが、質問内容や回答結果をよく見ていくと、このような数字が出た背景が分かってくるはずです。
今回、21~22日に読売新聞社が行った調査では、以下のような質問の仕方をしています。
「少子・高齢化によって、今の社会保障制度を維持できなくなるという不安を感じますか?」
これついては、93%の人が「不安を感じる」と回答しました。
「制度の水準を維持するために、税金や保険料が高くなっても構わない」
そして、この質問の回答が、「必要」63%となるわけです。
ちなみに、同じ21~22日に、毎日新聞が行った世論調査を見てみましょう。
こちらの質問は、「消費税率を2014年4月に8%、2015年10月に10%に引き上げるとした政府・与党の素案について、どう思うか」というもの。
結果は、「賛成」37%、「反対」60%でした。
つまり、こちらの方は、1週間前に改造内閣発足時に他社が行った世論調査の結果とほぼ同じ結果だったわけです。
この違いは、皆さんよくお分かりのように、質問の組み立て、つまり「どんな内容の質問を、どんな順序で行うかで、結果に大きな差が出てくる」ことを示しています。
皆さんが、アンケート調査を実施・分析される際に、留意するすべきこととして、質問の組み立てがいかに大切かということが、分かっていただけたかと思います。
余談になりますが、21~22日に読売新聞社の調査では、続けて「消費税引き上げの時期について、政府・与党の素案通りに、2014年4月に8%、2015年10月に10%に引き上げるべきか」という質問をしています。
「素案通りの時期に実施すべき」いう回答は、16%にとどまりました。
気をつけていただきたいのは、讀賣新聞の見出しに「消費税引き上げ『必要』63%」とババーンと掲載されるのは仕方ないとしても、それを、多くのネットニュースで、何の解説もなしに「読売の調査で、消費税引き上げ『必要』63%」と伝播されていくという事実です。
ニュースと解説は、別ものなので、それはそれで仕方ないのですが、それを受けとる私たちの方は、忙しい毎日の中で、ニュースのヘッドラインだけを流し読みして分かったようにつもりになっていないか、常に気をつけていかなれければならないでしょう。
次回は、私たちが実施するアンケート調査において、質問項目の組み立てが、結果にどのように影響を与えるのか、もう少々の考察を続けてみたいと思います。
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http://enqmaker.jp/
(by インディーロム 渡邉修也)