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H2Hマーケティング実践編 
「食料安全保障とは・その2:
品目別データの留意点」

品目別にみると、2022年の主な食品のカロリーベースの食料自給率は下記のようになっています。

米 99%、野菜 75%、魚介類 53%、砂糖類 36%、果実 33%、大豆 26%、小麦 17%、畜産物 16%、油脂類 3%、その他 22%

1965年には110%で輸出するほどあった魚介類は半減し53%へと低下しています。和食離れ、魚離れで、魚の消費量がかなり減っているにも関わらず、自給率が半減した要因は、日本人が好んで食べる魚の種類が変わったためです。60年代はイワシ、アジ、カツオ、タイ、サバ、ニシンなど各地方で水揚げされた魚、つまり国産の比率がそれなりに高かったのですが、食文化が変わり、マグロ、サーモン、エビ、タコなど、大半が輸入に頼っている魚の消費割合が増えたことによります。(ウナギやアサリなど、中国から生きたまま輸入し、一定期間日本の海で養殖したら、国産としてカウントされるものもありますので、実質的には50%を切っているのでしょうね・・・。)

畜産物の16%に違和感を感じられた方も多いのではないでしょうか?スーパーに陳列されている豚肉や鶏肉は国産の割合がもっと多いよう感じられるからです。これには明確な理由があります。統計データを取る時の国際的な(具体的にはFAOの)取り決めで、畜産物に関しては、家畜が食べている飼料の輸入/国産の割合に基づいて算出するルールがあるからです。日本の場合、飼料は輸入の大豆、トウモロコシへの依存率が高いため、豚肉や鶏肉であっても、自給率が低くなるわけです。これは、肉牛や乳牛に関しても同様です。

なお、畜産物については、消費者や生産者の実感とのズレがあるという理由で輸入飼料を考慮しない「食料国産率」というものも公表されており、こちらだと64%となっています。(しかし、いずれにしても国際基準では16%という厳然たる事実は変わらないため、食料国産率というのは、個人的にはあまり感心はしません。)

追い打ちをかけるようで心苦しいのですが、畜産物でさらに暗くなりそうな話しが・・・。ニワトリは卵用鶏と肉用鶏で品種が異なりますが、どちらも国内で卵から孵化して生まれたヒヨコはほとんどいません。初生雛(しょせいびな)と呼ばれる孵化したばかりのニワトリの雛(ひな)をほぼ100%輸入しているそうです。つまり、雛の輸入がストップしたら、国産の卵も鶏肉も市場からほぼ消えてしまうわけです。

では、野菜はどうでしょうか?75%と、畜産物、小麦、大豆と比べ、自給率が高く優秀にみえます。実際、スーパーの野菜売場を見ても、たまにメキシコ産のアボカド、アスパラガス、韓国産のパプリカなどありますが、大半は国産野菜に見えます。

確かに、大半の野菜は実際に国内で生産されています。しかし、種や苗はどうでしょうか?

実は、野菜の種の9割以上は輸入に頼っています。私たちが地場野菜だと思って食べている三浦大根も、小松菜も、京野菜ですら、種は輸入物が大半を占めているそうです。

種を取っておいて、翌年播けばよいのでは?

かつてはそうでした。しかし、現在、日本で生産されている野菜の大半はF1種(エフワンしゅ)と呼ばれる一代限りの交配種になっているそうです。収量の多い品種と害虫に強い品種など、複数の品種の良いところを掛け合わせたものですが、一代目は期待通りのものなのですが、二代目以降は、不揃いのものが多くなったり、収量が落ちたりするため、毎年種を買う必要があるそうです。

しかも、2021年施行の「改正種苗法」で、在来種を除く大半の品種で、自家増殖(自家採種)が原則禁止となったため、ますます、輸入の種に頼る傾向が強まっているようです。

(by インディーロム 渡邉修也)

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