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マーケティング再入門 
「H2Hマーケティングとは・その43:
H2Hプロセスの成否はマインドセットが決める」

コトラーは「アウトバウンドとインバウンドマーケティングが混在する世界での新しいマーケティング活動は、プロセス性を備え、目まぐるしく変わる環境に瞬時に対応できなければならない」としています。

ここでアウトバウンドとインバウンドについて復習しておくと、アウトバウンド・マーケティングとは、企業から生活者に向けて情報発信するような従来型の情報提供をいいます。TVCMや新聞・雑誌広告、ダイレクトメール、新規顧客を掘り起こすようなテレ・マーケティングなどが典型的なものです。

一方、インバウンド・マーケティングは、お客様が自らの興味・関心により、情報収集を行い、商品やサービス、企業を評価してもらい、自発的に選んでもらえるように促し、導いていくマーケティング手法になります。

コトラーは「状況に関係なく、いかなる企業であれ、H2Hプロセスを活用すれば簡単に前後どちらにも反復できる」と言います。

そして「このプロセスはもともとリーンで実験的である。どんなアイデアでも、どのような段階(顧客に関する洞察、バリュープロポジションの設計、コンテンツ作成、ブランディング等々)にあっても試すことができ、リーン概念の学習プロセスによって、あらゆる状況の様々な企業がマーケティングを迅速に改善することができる」ということです。

リーンとは、資金などのリソースが限られた中で、短期間かつ低コストで新規事業の立ち上げを目指すリーン・スタートアップ(lean startup)が用いる開発手法であるMVP(Minimum Viable Product:必要最低限の製品)の考え方を参考にすべきだということです。

小刻みに試作や改善を行い、実際のユーザーに是非を問い、意見を取り入れながら、改善や軌道修正を繰り返しことができれば、確かにコトラーの言うように「あらゆる状況の様々な企業がマーケティングを迅速に改善することができる」ことでしょう。

しかし、これを実践することはなかなか難しいことだと思います。

コトラー自身も「H2Hプロセスの適用の成否は、適用企業のマインドセットに依存する。現実的には、既存のガチガチに決められた構造や手順を手放し、H2Hマーケティングのリーン原則を適用する覚悟がある企業は一握りしかいない」とも言っています。

H2Hプロセスとは、デザイン思考、サービス・ドミナント・ロジック(S-DL)、デジタライゼーションの考え方・方法を用いながら、まずは、H2H問題を発見し深い洞察を得ることからスタートし、問題解決に向けたバリュープロポジションを開発し、価値あるコンテンツを提供しつつ、ユーザーとの対話を重ねていくというプロセスです。

コトラーは、そうしたH2Hマインドセットを持ち、リーンな取り組みを、マーケティング部門だけでなく、全社的に継続していける企業が「競争を激しい世界で新たな可能性をもたらす柔軟で反復的な手順を生み出す」としています。

(by インディーロム 渡邉修也)

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