アンケートメーカー

マーケティング再入門 
「H2Hマーケティングとは・その36:
バリュープロポジションの開発」

コトラーはH2Hマーケティングの中で「顧客グループが選定され、ペルソナとして共感できるように表現されたら、次のステップとして『どうすれば?』という探索の方向性を含めた帰納的な問題提議を行う」としています。

具体的には、ソリューション候補となる特定ユーザーに向けてのバリュープロポジション(価値提案)の作成になります。

バリュープロポジションの開発は、H2Hプロセスの肝となるもので、S-DLの共創概念に則り、積極的に顧客を巻き込みながら、協働作業として意見交換をしながら、練り上げていきます。

この連載の中でも繰り返しお伝えしてきたように、企業が提供できるのはバリュープロミス(約束)ではなく、バリュープロポジション(提案)のみです。最終的に価値判断をするのは企業ではなく顧客自身であるというS-DLの考えにもとづくものです。

S-DLの提唱者であるバーゴとラッシュは「マーケティングは継続的な社会経済的プロセスであり、企業が常に競合以上のバリュープロポジションを創出するべく協働するオペラント資源に主に着目している」と言っています。

オペラント資源とは、企業が獲得することが困難な無形の資源のことで、ナレッジやスキルなど、無形、動的、無限、ソフト的な資源のことです。

つまり企業が丸抱えすることが難しいものであるが故に、積極的に顧客を巻き込み、協働していくことが大切であり、その延長線上に、競合以上のバリュープロポジションが生まれる可能性があるわけです。

S-DLの考え方によれば「バリュープロポジションが提示する価値は顧客の文脈でしか生まれない」ということになります。

企業側が良かれと思う価値を一方的に提供するのではなく、Why、Whatの探究段階から、顧客との価値共創プロセスを積み上げていきながら、Howを導き出していくということです。

特定された問題について、当事者である「顧客」との協働作業での知識やスキルの交換を積み重ねていくことで、当初企業側が想定していたバリュープロポジションが 、“顧客の観点” によってカスタマイズ、ブラッシュアップされ、当事者とってより価値の高いソリューションとして練り上げられていく、というのが理想です。

コトラーは「バリュープロポジションの基盤となるのは価値提案キャンバスであり、H2Hマーケティングでさらに展開され、S-DLの共創原則で補完される」、「ハードウェア、ソフトウェア、サービス機能は顧客のメリットをもたらす技能や知識を運ぶ媒体であり、顧客に提供されるサービスの一部であり」、「顧客はバリュープロポジションから経験を得たいのであり、『自分の文脈』でそれを使用して価値を得たいのだ」としています。

また「企業や顧客は、共創された個々の体験や新たな革新的ソリューションを可能にするため、ネットワーク構造をますます利用するようになる」と指摘し、それらが「経験・体験の環境」としてどのように形成されていくのかが問われるとしています。

(by インディーロム 渡邉修也)

ページトップへ