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「宇沢弘文『社会的共通資本』を読む・その24:
ヴェブレン後の制度学派の評価」

ヴェブレンの死後、彼の考えは、制度学派、のちに進化論的経済学派と呼ばれる経済学者たちに引き継がれていきます。

なぜ制度学派と呼ばれるようになったのでしょうか。

宇沢の解説によると「制度学派のアプローチは、ケインズ経済学のそれとは基本的に異なるものであった。ケインズが、景気安定のためにどのような財政・金融政策をとる必要があるかを問題としたのに対して、制度学派は、現代資本主義に内在する制度的な欠陥から、このような問題が発生すると考えた」ということです。

ケインズの景気安定策が、不況が発生した際の対症療法的なものであるとしたら、ヴェブレンをはじめとする制度学派では、なぜ不況が発生するのか、資本主義のどこに問題があるのか、制度をどのように変えていくべきなのかということに着目していたわけです。(ヴェブレンの場合、資本主義という枠組み自体がそもそも問題ではないのかという踏み込んだ議論へと進んでいったために、政財界はもちろん、学界からも疎んじられていったようです・・・。)

制度的な欠陥の中で、ヴェブレンが特に問題視していたのが、寡占状態下における少数企業によるアドミニスタード・プライス(管理価格)でした。

ヴェブレンの死後、1930年代の大不況期に、制度学派の経済学者たちは「総産出量、消費、投資の間に基本的にどのようなマクロ経済的な関係が存在するのかという問題を分析し、安定的経済成長を長期間にわたって持続的に維持するためには、価格と所得の間にどのような関係がなければならないか」という問題に焦点をあてていた、ということです。

アドミニスタード・プライスによる価格の硬直性は、総生産、投資、消費に影響を及ぼし、大きな歪みをもたらします。

顕著な例として、宇沢は「第二次世界大戦後、価格、賃金の硬直性によって、企業会計、個人の家計にも大きな歪みが発生し、価格=費用の関係もまた、著しく歪んだものになった」ことをあげています。

制度学派の主張は「経済成長を持続させるために、賃金=価格の関係が適正な水準に安定的に保たれ、同時に、消費=投資の関係もまた安定したものでなければならない」というものです。

アーロン・ゴードンは「現代経済学における制度的要素」の中で、制度学派経済学の考え方を、次のように要約しているそうです。

「すべての経済行動は、その経済主体が置かれている制度的諸条件によって規定されている、と同時に、どのような経済行動がとられたかによって、制度的諸条件もまた変化する。この、制度的諸条件と経済行動との間に存在する相互関係は、進化のプロセスである。環境の変化にともなって人々の行動が変化し、行動の変化はまた、制度的環境の変化を誘発することになり、経済学に対して、進化論的アプローチが必要となってくる」

制度が一方的に規定するのではなく、経済行動によって制度的諸条件も変化するという相互関係であるため、制度学派は、進化論的経済学派と呼ばれるようになるわけです。

(by インディーロム 渡邉修也)

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