マーケティング再入門 
「包摂を意識したマーケティングとは・その5」

「開かれた民主主義が意味することは、私たちが政治的決断を透明にし、説明すること、できる限り、私たちの行動の根拠を示し、それを伝えることで、人々の理解が得られるようにすることです。」

これは、今年(2020年)3月に、ドイツのメルケル首相がコロナ対策について国民へ向けた演説の一部ですが、大変評判になったので、皆さんもビデオや翻訳文などをご覧になった方も多いと思います。

この連載シリーズ「包摂を意識したマーケティングとは」は、前回の4回目で終了にしようと思っていたのですが、包摂を考える際にその前提となる社会のあり方についての基本認識はとても大切なことであり、今回のメルケル首相の演説の中には、そのエッセンスが散りばめられていると思われますので、もう少し引用させていただきます。

「私たちは民主主義社会です。私たちは強制ではなく、知識の共有と協力によって生きています。これは歴史的な課題であり、力を合わせることでしか乗り超えられません。」

今回の地球規模のパンデミックによって、経済も大きく影響を受け、実際に人びとの暮らし方、生き方も変わらざるを得なくなったこと(あるいは近い将来にそうなる可能性が大になったこと)で、図らずも、包摂ということを多くの人びとが考えなければならない状況になったということだと思います。

しかし、ことはそれほど単純なものではありません。包摂ということを考える以前に、自分のことで精いっぱいで、人のことなど考えている余裕はないという現実にも、(私も含め)多くの人が直面しています。

メルケル首相の演説は、そうした局面だからこそ「民主主義」という大きな枠組みを提示し、パニックに陥らず、冷静な判断と思慮ある行動を呼びかけるものでした。

社会や世界が変わることで、民主主義のほかにも、資本主義、グローバリズム、ナショナリズム、自由と制限、個人と集団(あるいは共同体)、共同と排除、協調と孤立など、様々な位相で判断と選択を迫られることが多くなってくると思います。理想と現実、建て前と本音ということもあるでしょう。

個々人や一企業は、無力ではないものの、やはり微力な存在です。判断と選択の範囲は限られています。やはり大きな流れは、政治や行政が枠組みを提示し、方向性を示していく必要があります。それは、一部の人たちの利害や場当たり的なものではなく、「民主主義」、「社会保障」、「公正」という大きな視点で語られ、示されるものであるべきです。

(by インディーロム 渡邉修也)

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