マーケティング再入門 
「包摂を意識したマーケティングとは・その4」

コトラーは、2015年頃から資本主義と民主主義の未来を憂慮し、軌道修正や再構築を図るべきだと主張する著作や講演を行っています。著作では「資本主義に希望はある」 (2015年)、「コトラー マーケティングの未来と日本」(2017年)などです。

リーマンショック後、金融資本主義が根本原因を取りのぞくことなく、うわべだけのルール改正にとどまったことへの懸念や、上位数パーセントの富裕層への富の蓄積と格差拡大、それを理論的に説明した2013年のトマ・ピケティの「21世紀の資本」(日本版は2014年12月)、クルーグマン、スティグリッツなど世界をリードする経済学者の警鐘を、コトラーなりに咀嚼しメッセージとして発信しているのでしょう。

2017年に日本向けに刊行された「コトラー マーケティングの未来と日本」の中では、ピケティの主張を紹介しています。

「ピケティが取り上げたのは、自由市場主義経済を採用するかぎり、不平等が拡大することは避けられない、というテーゼだった。簡単にいえば、資本収益率(投資で得られる利益)が世界経済の成長率を超えるのか、それとも下回るのか、ということである。」(「コトラー マーケティングの未来と日本」より)

ピケティの「21世紀の資本」は読んだことがある人とそうでない人に分かれると思いますので、少し補足すると、ピケティは、長期的にみると、株や不動産、債券などへの投資による資本収益率(r)は、経済成長率(g)を上回るという歴史的事実がある。これは「r > g」の不等式で表現され、資本主義が従来のやり方を続けるならば、投資余力のある層とそうでない層との格差は広がる一方となる。そうなると、20世紀に人類が目指していたはずの所得格差の縮小という流れから、再び貧富の格差拡大へ向かうだろう、と主張し、さらに、持てるもの、持たざるものの格差を縮め、世代間での負の連鎖を断ち切るためには、やはり「教育」が大切なのだと主張しています。

また、コトラーは「資本主義に希望はある」の中で「資本主義が抱える14の欠点」をあげています。

1番目から13番目までは、資本主義にはこういう点が問題であると列記していますが、最後の14番目は「資本主義は、市場の方程式に社会的価値と幸福を持ち込む必要性がある」として、こうすべきだという前向きな言い方になっています。

コトラーの意図としては、資本主義に未来がないわけではなく、1~13の問題点を是正するような知恵を出し合えば、なんとかなると言っているわけで、14番目は、その方向性を指し示すものなのだと思われます。だからこそ「資本主義に希望はある」という本のタイトルなのでしょう。

社会的価値と幸福は、ここ4回の連載で取り上げてきた包摂や社会的包摂という考え方をマーケティングや経営理念の中、あるいは、国家の経済政策、制度設計の中にいかに盛り込んでいくことができるのか、ということにかかっていると考えられます。そのためには、一部の政治・経済・行政のエリートだけではなく、私たち一人一人の意識も変わる必要があり、トリクルダウンではなく、トリクルアップの流れを作っていくべきなのです。

(by インディーロム 渡邉修也)

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