マーケティング再入門 
「3.0/4.0における社内マーケティング・その4」

「社員にとって、協働的、文化的、創造的なシグニチャー・エクスペリエンス(その組織で働くことでしか得られないような経験)をもたらすようなプラットフォーム(基盤)を構築していくこと」が経営者の務めであることを、前回復習しました。

星野リゾートの星野佳未路氏も、「『指揮命令的発想』から『支援的発想=エンパワーメント』へ組織を転換することが大切」と語っています。

エンパワーメントの事例としてよく紹介されているのが、リッツ・カールトンの「従業員に1日2,000ドルの決裁権」を与えているという話です。

皆さんもきっとどこかで、お客様が部屋に忘れた大事な資料をスタッフが新幹線に乗って届けて無事間に合ったといったエピソードを目にされたことがあると思います。

ここでは、1日約20万円という金額は特に意味を持ちません。実際に日本国内のリッツ・カールトンでは年間でも20万円未満に収まっているそうです。

大切なのは、働く人たちに、リッツ・カールトンで働くことを誇りに感じてもらい、自発・自律的にものごとに取り組み、判断し、行動を起こしてもらうような仕組みを構築したこと、また、それを実践し定着させていることです。

働くことに誇りを持つこと。それが端的に表現されているのが「紳士淑女をおもてなしする私たちもまた紳士淑女です」というモットーです。リッツ・カールトンでは、ホテル内の従業員全員宛のメールの書き出しは Dear Ladies and Gentleman ではじまるそうです。

そうした一つ一つの積み重ねが、企業としての共有価値を定着・浸透させ、仕事や職場への誇りとやる気を醸成し、自発・自律的な行動へと促しているのでしょう。まさに、シグニチャー・エクスペリエンスの見本です。

また、リッツ・カールトンは、権限を与えるだけなく、サービスを裏側で支える情報システムの基盤づくりおいてもホテル・旅館業界では先行しています。

顧客情報は、細かくデータベースに記録され、担当スタッフが閲覧できるようになっていて、受け入れ準備の段階から、事前に起こり得る出来事を予測することからスタートするため、ある程度のトラブルが発生しても想定内の出来事として迅速かつ的確に対応できるようになっているそうです。

京都の老舗旅館・柊家(ひいらぎや)では、お客様の好みの味や湯加減、持病まで細かく覚えていて、女将さんや中居さんがもてなしてくれるそうですが、これは古くは女将さんの手帳や頭の中のデータベースによって実現されてきたスペシャリティなおもてなしであるわけです。

企業がある程度の規模になれば、データベースのような情報基盤を構築し、それを“適切”に運用していく権限をスタッフに与えることは「意思決定のローカル化」の成否をも左右します。

つまりは、企業が規模が大きくなろうとする過程では、社員のエンパワーメントと、それをお題目だけに終わらせない日々の取り組み、それを促し支援するプラットフォーム(基盤)の構築がとても重要であるということになります。

(by インディーロム 渡邉修也)

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