マーケティング再入門 
「これからの商品・サービスの開発・その15」

「消費者に自分たちには力があるというエンパワーメントの感覚を与えることは、ブランドのミッションを追求するうえできわめて重要である」

コトラーは「顧客エンパワーメント」を、マーケティング3.0において、企業が自らのミッションを消費者へマーケティングするために不可欠な三原則の一つとして、「普通ではないビジネス」、「人びとを感動させるストーリー」と並べ提唱しています。

しかし、ここに“上から目線”を感じるのは私だけでしょうか。

消費者に対して「エンパワーメントの感覚を与える」という言い回しには、例えるならば、実際には、最初から落とし所が決まっているのに、タウンミーティングを開くことで、あたかも住民の意見を広く聴き公明正大に決めさせていただきました、という政治行政の手続き上の手法に似たものが感じられます。

上の一節はコトラーのマーケティング3.0」からの引用です。この本が出版された2010年は、TwitterやFacebookなどのSNSが大きくユーザー層を獲得し浸透していった年でもあるわけですが、この本自体が執筆されたのは、それより少し前のことになるので、そのことを考慮して読んでいく必要があると思われます。

なので、本の中で紹介されているアマゾンで購入者が本や製品の評価コメントを書いたり、コルゲートが消費者の「笑顔」を投稿するサイトを開設したりしていることを、例にあげていることも、今では当たり前のこととして感じられるかもしれません。

なにもコトラーの揚げ足を取ろうというわけではありません。ようは、この本が出版された2010年以降、SNSの影響力はさらに拡大し、もはや「感覚を与える」という段階ではなくなっているという前提に立ち、私たちはものごとを捉え、考えていく必要があると、コトラーの本を読んで感じたわけです。

そのことは、マーケティング3.0の三原則の一つである「人びとを感動させるストーリー」にも当てはまるかもしれません。

「人びと」というところが、企業対消費者、つまり一対多の発想に陥りがちです。実際に、マーケティング3.0の本が出てしばらくは、目新しさを求める広告宣伝の技法の一つとして、意図的に作られたお涙頂戴式の感動ストーリーや動画がSNSで大量発信され、今もよく見かけます。これ自体は広告宣伝のテクニックの一つとして、個人的には凄いなよくこんな話を作れるなとコピーライティング技術について素直に感心し、うかつにも涙まで流してしまうわけですが・・・。

コトラーの本を精読していくと分かる通り、コトラーはそういった表層的な感動への誘導は、すぐに消費者に嘘や底の浅さを見透かされ、むしろ評価を下げるため、もっとも避けるべき手法とされています。

「コトラーのマーケティング3.0」の出版から早9年、「同・4.0」から2年が経過するわけですが、コトラーのキーワードだけ取り込むのではなく、真意を読み取り理解したうえで、日々の仕事に活かしていきたいものです。

(by インディーロム 渡邉修也)

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