マーケティング再入門 
「ソーシャル/社会的責任/ソサイエタル?」

マーケターは、企業の利益、消費者の満足、公共の利益という、とかく衝突しがちな判断基準を調整しなければならない。(「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 第12版」より)

前回のホリスティック・マーケティングの中で「社会的責任マーケティング」という領域があることを学びましたが、マーケティング関連の用語で「ソーシャル・マーケティング」「ソサイエタル・マーケティング」などを目にする機会も多いと思います。

皆さんは、この3つの違いをきちんと説明できるでしょうか?

ソーシャル・マーケティングの説明には大きく2つあり、一つはマーケティングの考え方を政府や非営利組織の活動にも拡張・適用していこうという考え方(コトラー等)と、もう一つは従来の利益追求型マーケティングへの批判・反省から、社会的利益や倫理の視点も重視すべきだという主張から生まれた考え方(W.レイザー等)です。

このように書くとコトラーは利益追求主義者かと勘違いされそうですが、コトラーの本を読むと、企業の社会的責任、コンシューマ重視の大切さが繰り返し強調されていますので、誤解のなきよう。

社会的責任マーケティングとソサイエタル・マーケティングは、私の理解としては下記ような関係にあると考えています。

 社会的責任マーケティング(マーケティング領域に関する基本的な考え方)
   └ソサイエタル・マーケティング(上記をコンセプト化したもの)

社会的責任マーケティングは、広い視点で問題意識を持ち、倫理、環境、法、社会的文脈で理解し企業活動に反映していくことが、中長期的に企業の評判を高め、ブランド認知度、顧客ロイヤルティを高めていくという基本的な考え方。

ソサイエタル・マーケティングは、上記の基本的な考え方に基づきそれをマーケティング・コンセプト化したもので、コトラーによれば「標的市場のニーズ、欲求、利益を正しく判断し、消費者と社会の幸福を維持・向上させるやり方で、要求に沿う満足を競合他社より効果的かつ効率的に提供すること」とされています。

冒頭の一節は、マーケターが企業の社会的責任を意識しつつ、マーケティング・コンセプトを練り込んでいく際に留意点を述べたものですが、「企業の利益」「消費者の満足」「公共の利益」、これって近江商人の「三方よし」の「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」とぴったり重なるわけです。

近代資本主義的なマーケティングでは、より広範囲な消費市場を求めてグローバル展開がなされていくわけですが、国土の狭い日本では、外へ外へ拡張するマーケティングよりも、共生や循環という発想が古くからの知恵として根付いているのかもしれませんね。

(by インディーロム 渡邉修也)