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統計・世論調査を読む 
「ISSP国際比較調査」から

NHK放送文化研究所が出している雑誌「放送研究と調査(2013年12月号)」に興味深い調査結果が掲載されていたので、概要を紹介しておきます。

掲載された特集記事のタイトルは「格差意識の薄い日本人 ~ISSP国際比較調査『社会的不平等』から~」です。

ISSPというのは、International Social Survey Programme:国際社会調査プログラムの略称です。

1985年から行われている国際比較調査で、近年は40ヵ国前後が参加しており、国際比較分析をする上で、有用性の高いデータの1つとされています。

この調査の特徴は、毎年テーマを絞り込んでおこなっていること。また、数年おきに同じテーマで調査することで変化を捉えることができる点です。

近年のテーマは、「職業意識」「余暇とスポーツ」「宗教」「社会的不平等」「環境」などです。

今年(2013年)は、「社会的不平等」がテーマになりました。同じテーマで日本が調査に参加したのは、1999年、2009年、そして今回の2013年の、計3回になります。

この14~15年間は、グローバル化の激流の中、日本社会が、世界が、大きく変化した時代でもあります。

山一・拓銀の破綻、9.11、ITバブル、リーマンショック、民主政権、そして、東日本大震災、アベノミクス・・・。

今回の「放送研究と調査」では、2013年の調査に関して、以下の2つの点に注目しています。

1つ目は、自分が社会的にどんな階層にいると思うかを10段階で聞いた質問について、日本では「下位(1~5)に属する」と回答した人が7割もいて、参加41ヵ国の中でも多くなったこと。

1999年の調査では、ほとんどの人が中間層にいる「釣鐘型」だったのが、2009年の調査では上位に少数のエリートがいて、下位へ向かってなだらかに数が増えていく「ピラミッド型」に変化、そして、2013年には、2009年の中間層がさらに下位へ移動し「逆さじょうご型」になったということです。

自分の仕事の社会的位置付けが、父親が就いていた仕事よりも低いとする男性は36%で、参加国の中で最も多かったということです。

2つ目は、そうした自分自身のポジションを下方修正する意識がある一方、社会については、「格差のある社会」だという認識や、「所得の格差が大きすぎる」と考える人が、他国と比較して少ないという事実です。

「放送研究と調査」では、日本人の格差に対する意識が希薄なこと、過去の調査と比べ医療や教育の格差を容認する人が増加している点をあげ、このような格差への危機感が薄い社会においては、機会均等への取り組みが進まず、格差がさらに広がる可能性もある、と指摘しています。

興味のある方は、実際に記事を読んでみてください。

(by インディーロム 渡邉修也)

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