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「今さら聞けないビッグデータ(2)」

前回はビッグデータの定義について私なりにまとめてみましたが、今回は、ビッグデータに関する最近の報道から感じたことをちょっと書いておきます。

この週末、NHKのニュースを見ていたら、日立製作所が、JR東日本のSuicaのデータを元に、顧客の目的に応じて分析した結果を、年間契約料500万円から提供開始するという話題を取り上げていました。

一般向けの夕方のニュースなので、技術的な話はなく、「最近ビッグデータっていう言葉をよく聞くけど、個人情報の取り扱いはどうなっているの?」という一般生活者の疑問に応えるような内容です。

街角のインタビューとして、上記のような素朴な疑問に始まり、「データ活用はよいけれど、個人情報はきちんと保護してほしい」という意見、「よりよいサービスや商品開発に役立つならデータの活用は歓迎する」という意見が続き、その後に、今回JR東日本から日立へ提供されるSuicaのデータは、名前や住所などいわゆる個人情報に該当する部分は取り除いたうえで提供されるため、個人情報保護の上で特に問題はないこと。そうした理由から、JR東日本側では顧客であるSuica利用者に対しては、改めて説明をする必要はないと考えていることがなどが紹介されます。

さらに続けて、日立側では、このSuicaのデータを、顧客企業に対し年間契約料500万円から提供していくこと。こうした、ビッグデータのビジネスへの活用は今後、他の企業でも増えていくだろう、ということで締め括っています。

NHKも、ここまで露骨に提灯ニュースをやるのだなという典型ですが、今回、この話題を取り上げたのは、これが特に新しい取り組みであるからでも、NHKに突っ込みを入れたいからでもありません。

いよいよ、データがデータとして、売り買いされる時代が本格的にやってきたなということを、強く感じたからです。

実際、Suica以上に、販売データ、会員データを蓄積している会社は沢山あると思います。

例えば、クレジットカード会社では、カード利用者が、どこでどんなものを購入しているのか、年収、職業、家族構成、持ち家比率、既婚・未婚など、より詳細なデータを持っており、そうした会社では、20年も、30年も前からずっとデータの分析をやってきていること、また、そうしたデータが、クレジットカード会社やそのグループ企業などのマーケティングに活用されたりしていること誰でも知っていることです。

これまでと大きく異なる点は、クレジットカード会社とそのグループ内以外には門外不出と、漠然と信じ込んでいたデータが、これからは、個人情報部分は削られているとはいえ、堂々と売り買いの対象になったということでしょう。

それに対して、不安感を持つ人が出てくるのも当然です。今回のNHKのニュースは、そんな漠然とした不安に対して、はい、この通り、個人情報の部分は削ってありますから心配はいりません、という産業界からのメッセージであり、データビジネス時代の幕開けを告げる宣言だったのかもしれません。

(by インディーロム 渡邉修也)

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