統計・世論調査を読む 
「GNIって何でしたっけ?」

前回は、景気回復の実感について、各メディアが伝える調査データなどをまじえて書いてみましたが、今回は、経済指標についての話題です。

先週、安倍首相が「10年後に1人当たり国民総所得を150万円アップさせる」という発言し、さらに、街頭演説の中で「国民総所得」を“国民の平均の所得”とか、“年収”、“皆さんの収入”などとさまざまな言い換えをしたために、「単なる言い間違い」とか、「いや確信犯的に言い換えている」等、ネット上でいろいろな反応が起こっているようです。

さて、皆さん、このニュースを見ながら、「国民総所得」って、何だっけ?と思われた方はいらっしゃいませんか?

このメルマガを読んでくださっている方の多くは、中学や高校の授業で、国の経済力を図る指標として、GDP(Gross Domestic Product 国内総生産)と、GNP (Gross National Product 国民総生産)という用語を習った世代かと思います。

しかし、数年前から内閣府が発表するデータとしては、GNP(国民総生産)は使われなくなり、代わって、GNI(国民総所得)の方が使われるようになっているそうです。(へぇ~。って、知らなかったのは俺だけ?)

理由は、GNI(国民総所得)の方を採用する国が近年多くなったこと、“総生産”って言葉より、“総所得”という言葉の方が実態に即しているからということのようです。

実際、GNP(国民総生産)とGNI(国民総所得)がどこがどう違うのでしょうか?
内閣府の解説ページによると、

実質GNP(68SNA)=実質GDP+海外からの所得の純受取(実質)
実質GNI(93SNA)=実質GDP+交易利得+海外からの所得の純受取(実質)

と、上記のような定義式となり、「交易利得(=輸出入価格の差によって生じる所得の実質額)」の調整が入るかどうかの違いであって、大雑把には、つまり庶民レベルで国の経済がどうだこうだと酒場の談義をする分にはGNPでも、GNIでも、大した違いはないらしいです。(つまり、GNPとGNIの違いで、人の揚げ足を取るやつは嫌われるという~。)

国民総所得(GNI)とは、一国全体を所得の面から捉えたものということになるわけですが、ここで注意が必要です。

「国民」というのは、個人のほか、法人も含んでいるわけで、例えば、法人が海外で投資をして、利益が出たというのも含まれます。つまり、日本国内で発生した取得だけでなく、海外で発生したものも含まれるということです。

なので、10年後に国民総所得で150万円アップさせるというのは、我々庶民の財布に、ダイレクトに150万円がプラスされるわけではなく、法人などの所得が伸び(多分・・・)、その恩恵として、巡り巡って私たちの年収も多少は増えるかもしれない、増えるといいよね~という程度の話なわけです。

実際、2003年から2007年までの5年間に、GNIを人口で割った「1人あたり国民所得」は約398万円から約414万円へと16万円アップしたものの、サラリーマンの平均年収は443万円から437万円へと7万円減っているという事例(国税庁「民間給与実態統計調査」)もあり、ぬか喜びはできない話なわけです。

ちなみに、GDP(Gross Domestic Product 国内総生産)の方は、何を示している数値かというと、その国の国内経済がどれだけ活発に動いているかということを計るための指標といってよく、外国企業が、日本国内で何らかの付加価値を生産したということであれば、それは、米国企業であろうが、中国企業であろうが、日本のGDP(国内総生産)に組み込まれます。

以上、今回は、中学・高校の復習のような内容になりましたが、いかがだったでしょうか?子どもにきかれて時に「GNIってのはだな~」とお父さんがエバれるようなら幸いです。

(by インディーロム 渡邉修也)