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統計・世論調査を読む 
「マスコミ各社の憲法に関する世論調査から」

前回は、中高年縦断調査のさわりの部分をご紹介しましたが、今回は、3月下旬から4月下旬にかけて、マスコミ各社が実施した憲法改正に関する主な世論調査が出揃いましたので、ざっと見ていきたいと思います。

<憲法を改正すべきかどうか?>
       改憲すべき  現状維持
産経・FNN 61%    26%
毎日新聞   60%    16%
日経・テレ東 56%    28%
読売新聞   51%    31%
NHK    42%    16%
朝日新聞   39%    52%

まずは「憲法を改正すべきかどうか」という質問です。上表は、各社の結果を[改憲すべき]、[現状維持]という2項目に単純化し、[改憲すべき]が多いものから並べてみたものです。

この連載で、何度もご紹介しておりますが、実際には、各社の質問の仕方はさまざまで、調査手法も郵送式、電話調査、面接法などまちまちです。

特に、憲法のような重要問題については、「改憲」という単語を「憲法改正」とかえただけ回答者側の受け取るニュアンスが変わり、結果も変わりますし、調査員が前ふりとして、憲法改正の議論が活発化していますが・・・と、ひと言添えただけで、「ああ、世間では改憲の風潮が高まっているのだな」とバイアスがかかった状態での回答となりますので、見出しだけで判断するのは要注意です。

表の中で、ただ一社、朝日新聞だけが現状維持が多くなっているのは明確な要因があります。それは、朝日新聞の質問の仕方が「9条を変えるべきかどうか」という聞き方をしているためです。

憲法を変えた方がよいという意見の中には、自衛隊は他国から見たら事実上の軍隊だし、平和維持軍という連合的な“軍隊”の一部として、動くこともあるのだから、現行の憲法は実態に合わなくなっている、だから、実態に合わせた改憲が必要だという意見があります。

しかし、実態に合わせた方がよいという意見を持つ人でも、9条が掲げる平和主義は遵守したいという人もいるわけで、朝日新聞のような数字が出てくるのだと思います。

同じことは、産経・FNNの結果についてもいえるでしょう。憲法改正を聞く同じ調査の中に、北朝鮮情勢に関連し、同盟国への武力攻撃を日本の攻撃とみなす「集団的自衛権」を行使できるようにすべきかどうかとか、相手がミサイルを発射する前に、こちら側からミサイルを撃つのは専守防衛の範囲かどうか、といったかなり踏み込んだ質問をいくつも入れています。

質問内容、質問の言葉の選び方、質問の順序で、容易に数字は変わるのです。

憲法改正についての世論調査は、憲法記念日の記事ネタの1つとして、毎年、この時期に実施されているものですが、今回は、憲法改正に必要な手続きとしての、「96条を緩和すべきか」という質問が盛り込まれているが特徴です。

こちらに関しても、今夏の参院選の争点とすべきかどうかなど、各社の聞き方で、結果がだいぶ異なっているようなので、そうした点を注意して報道記事を見て、各社の意図するところを読み取っていただければと思う次第です。

(by インディーロム 渡邉修也)

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