アンケート再入門 
「第21回 閑話休題 パブリックコメントと世論調査」

今回は、アンケートの集計の話題から少しそれて、パブリックコメントについて考えてみたいと思います。

現在、国家戦略室が、8月12日締切でパブリックコメントを募集しています。
2030年時点での日本の原発依存度の比率を「3つの選択肢」の中から選び、それに関するあなたの意見をお寄せください、というものです。

そもそも、パブリックコメントとは、なんなのでしょうか?

ウィキペディアによると、「公的な機関が規則あるいは命令などの類のものを制定しようとするときに、広く公に(=パブリック)に、意見・情報・改善案など(=コメント)を求める手続をいう」とのことです。

これは、世論調査とはどう違うのでしょうか?

とても大雑把にいうと、世論調査は無作為抽出された回答者の意見を集約したもので、統計学的に偏りの少ない公平性のある“調査結果”とみなされるのに対して、パブリックコメントは、意見を言いたい人が、自分の意志で意見を投稿したものであり、統計学的にみると偏っている可能性が高いとみなされるいうことです。

最近のニュースの中で、興味深いものがあります。橋下大阪市長の下記のような談話です。

市政改革プラン素案に対するパブリックコメント(市民意見募集)について「反対が9割といっても反対の人がコメントを出すことが多いわけですから。
世論調査でやるような抽出作業をしていないので統計的には意味がない。市全体の意思を反映していないのだから、政策に反映させたら大変なことになる」

なるほど、パブリックコメントは反対意見を言いたいやつらの巣窟であると、仮に9割の反対意見が集まったとしても、それが政策・行政のプロの立場からして取るに足らない意見だと判断される場合は、無視することもあり得ると。

ということは、パブリックコメントを実施する側の論理としては、高まる世論のはけ口を用意し、「ガス抜き」をやっておこうという程度のことなのかもしれません。

あるいは、とりあえず反対の皆さんの意見も聞いてあげるから、ハシズムなんて言わないでね、ということなのでしょうか。

どうも、日本のおいては、パブリックコメントは、ウィキペディアが書いているように、何かを決める前の「手続」を重視して行わているようで、「広く公に、意見・情報・改善案を求める」ということは、なんだか軽視されているように思われます。

今回の、国家戦略室の原発依存度に関するパブリックコメントも同様のにおいが感じられます。

1つは、3つの選択肢に単純化したこと。「ゼロ」か「15パーセント」か「20~25パーセント」か。

この連載を、読んでいただいている方ならピンときたかと思いますが、これは、胴元である国家戦略室が呈示した選択肢です。

通常、アンケートでは、とりわけ、中庸を好むと言われる日本では、3つ用意したら、真ん中が選択される傾向が強いということは、皆さんなら、ご存知かと思います。

実際、7月に入ってからの政府関係閣僚の非公式の発言でも、今回のパブリックコメントに関連したNHKの特別番組でも、「15パーセント」に誘導しようという意図がありありとうかがえます。(偏りのない公平な立場の公共放送という名目で、真ん中の案を遠回しに推奨していましたね。)

また、世論調査の場合は、「わからない」とか「判断がつかない」といった第4の選択肢があるわけですが、パブリックコメントは、世論調査とは違ってあなたの意見を、この3つから選んで、意見を述べよという式のものなので、「わからない」といった第4の選択肢は用意していないわけです。

「わからない」「自分では判断がつきかねる」という人は、どんどん一見中庸にみえる「15パーセント」に誘導されていく可能性があるわけです。

支持率が低い政府としては、橋下市長のような強気の態度にはなかなか出られませんし、仮にパブリックコメントでわんさか「ゼロ」が集まってしまうととてもまずい状況になりますので、パブリックコメントと併行して「討論型世論調査(DP=deliberative poll)」を実施することにしています。

「討論型世論調査」は、今回はじめて実施するものです。

その方法は、無作為抽出された全国の3,000人に対して、パブリックコメントと同様の3つの選択肢で、電話での世論調査を実施します。さらに、回答者の中から200~300人を一同に集め、2日間の集中討論を行い、討論後の意識の変化を、更にアンケートで確認する、というものです。

そもそも、誰が3,000人を無作為抽出してるのか、その中から、200~300人はどのように選ばれるのか、そこになんらかの作為が入るのではないかという疑念は深まります(これは、無作為抽出を行っていると言われるマスコミの世論調査の闇の部分でもあります)。

さらに、討論についても、司会進行の場の仕切り方でかなりコントロールすることができます。

パブリックコメントで、どんな結果が出ようと、とにかく意図する案に持っていこうという強い意志が伺えます(こんなとこだけ意思強固とはトホホです)。

そんな、疑惑だらけのパブリックコメントですが、とは言うものの、普段は国民の意見すらきこうとしない、解散もしない、世論調査の結果すら気にしない、われらが日本政府が、せっかく用意してくれた意見提出の機会です。

私のこんなひねくれたコラムに惑わされることなく、興味のある方は、どんどん自分の意見を、パブリックコメントに投じてみてはいかがでしょうか?

<国家戦略室の特設サイト>
http://www.sentakushi.go.jp/

次回は、また元の話題に戻り、アンケートの集計について書いていきたいと思います。

<“アンケートメーカー”ご案内サイト>
http://enqmaker.jp/

(by インディーロム 渡邉修也)