アンケート再入門 
「第14回 自由回答の設問を考える」

前回、前々回は、少し横道にそれて「平均」について取り上げてみましたが、今回からは、また元の話に戻り、「アンケートの質問項目」を作成する際の留意点について考えていきたいと思います。

先日、このメールマガジンをご購読いただいている方から、こんな質問を受けました。

「自由回答の設問の集計をどのように行うべきか?」

回答件数は、数千票ほどあるそうです。100票、200票であれば、回答内容を1件ずつ読み込んでいけばよいのですが、数千票となると、ちょっと腰が引けてしまいますよね。ましてや、数万票ともなると・・・。

質問項目を作成する際には、予想される回答件数から、集計作業にどれくらいの手間がかかりそうか、考慮する必要があります。

自由回答は、回答者の意見や感想を、回答者自身の言葉(文章)で収集できるため、選択肢式の設問と比べると、1件1件の回答の情報量は、数倍以上になります(それが価値のある意見かどうかは別にして)。

しかし、先程書いたように、数千票、数万票になると、それを読み解き、整理する時間と人手(=お金)が確保できなければ、せっかくの貴重な意見も埋蔵されたままになってしまいます。

世の中には、テキストマイニングというものがあり、そうしたソフトやサービスを活用すれば、自由回答の内容を、分析・整理することも可能です。

実際に使ってみると分かりますが、分析専用に開発されただけあって、キーワードを入力すると、そのキーワードが含まれた回答が何件あるとか、類義語などを登録すると、さらに精度が高まっていって、どんどん興味・関心の赴くままに掘り下げることができて、と~っても楽しいものなのです。

でも、ハッと我にかえると、それは分析する“私”が楽しいのであって、調査の主目的は、もっと大雑把な数量的な傾向を把握することであり、自由回答はその数量的な傾向を補足するための参考資料にしか過ぎないということもあるわけです。

テキストマイニングをしていくと分かりますが、キーワードとして頻出するものは、調査前からある程度予測可能なものが多く、意外な意見というのはごく少ないものです。

つまり「選択肢」にすることが可能なものが多いということです。

理想を言えば、事前アンケートやグループインタビューなどを実施して、自由回答のパターンをある程度把握しておいた方がよいのですが、そうでなくても、考え得る回答を熟慮していけば、ある程度までは選択肢式の設問でカバーすることは可能だと思います。

そうすることによって、テキストマイニングサービスのお世話になることも、エクセルで、何度も何度も絞り込み検索をかけて、試行錯誤をしていくことも少なくなります。

選択肢にすることによって、数量化して比較することも容易になります。

自由回答を数量化するのは、昔なら「正」の字を書いて、いまどきは、エクセルやマテキストイニングツールを使って、カウントしているわけですが、それがなかなか一筋縄ではいきません。

例えば、下記のような自由回答データがあったとします。
あなたなら、どのように取りまとめ、数量化しますか?

Aさん:「TPPには参加すべきだと思う。ただし、日本の農林畜産業は守らなければならないと思う。医療・福祉なども現在と同等かそれ以上の水準が確保されるという条件つきでのことだ。」

Bさん:「TPP参加は反対。日本の農林畜産業は守らなければならないと思う。医療・福祉なども現在と同等かそれ以上の水準が確保されるべきだ。」

Cさん:「TPPには積極的に参加すべきだ。日本の農林畜産業は守るべきだが、競争なき保護は農林畜産業の自立にむしろ害悪である。医療・福祉などについても、自由競争の枠組みの中で切磋琢磨していくことで、現在と同等かそれ以上の水準が確保されると思う。」

3人の回答文の中には、「参加すべき」というキーワードが2件、「反対」というキーワードが1件が含まれています。つまり賛成2件、反対1件というように読むこともできますが、本当にそれでよいのでしょうか?

Aさんは、かなり厳しい条件を突き付けた上での「条件付き賛成」です。

となると、「積極賛成 0」「条件付き賛成 1」「反対 1」とすべきでしょうか?

でも、Cさんの意見を読むと、言葉は力強く「積極賛成」に見えるわけですが、本当に日本の農林畜産業は守られるのか、医療や福祉は現在の水準が保たれるのか、その根拠を教えてくれと問われたら、実際はどうなのでしょうか。

また、「農林畜産業」と「守る」をキーにすると、3人とも同じように「日本の農林畜産業は守るべき」という意見を持った人というようにカウントされるかもしれません。

「医療・福祉」「水準」「確保」をキーにすると、やはり3人とも「医療・福祉の水準は確保されるべき」と考えているように見えます。

いかがでしょうか?
いろいろな切り口で、様々なまとめ方ができると思います。

ちなみに、分析における試行錯誤は、分析する人(あるいは調査結果を発表する側)の「きっとそうだろう」「そうであってほしい」という仮説や希望的な推測を基に掘り下げていくことが多いので、分析する人によって、かなり着眼点や掘り下げ方が異なり、調査報告として「強調」される部分も異なってきます。

そこが、知的作業の面白みでもあるわけですが、調査報告は面白ければいいというわけではないので、むやみに1点だけを掘り下げたような報告書には、何か意図があると考えた方がよいでしょう。

なんだか、今回はまとまりのない話になってしまいましたが、自由回答の設問はとても価値のある情報ではあるけれど、むやみに多くすると、集計・分析の時に苦労するということは伝わったかと思います。

次回は、属性と本設問、集計・分析のとの関係で、アンケートの質問項目をもう少し検討してみたいと思います。

<“アンケートメーカー”ご案内サイト>
http://enqmaker.jp/

(by インディーロム 渡邉修也)